なぜ武内夏暉の1位入札を公表? 今年のドラフト戦略は…永井智浩本部長のコメント全文

國學院大・武内夏暉【写真:加治屋友輝】
國學院大・武内夏暉【写真:加治屋友輝】

國學院大・武内の特徴は「腕の振りと球速がマッチしていない」

 ソフトバンクは25日、都内のホテルでスカウト会議を行い、26日に行われる「2023年 プロ野球ドラフト会議 supported by リポビタンD」で國學院大の武内夏暉投手を1位入札することを決め、小久保裕紀新監督が公表した。大学生投手が豊作と言える中で、なぜ競合覚悟で武内の1位指名を決めたのか? 今年のドラフト戦略は? スカウト会議後に取材に応じた永井智浩編成育成本部長兼スカウト部長との一問一答は以下の通り。

――1位指名は武内投手に決めた。
「ピッチャーが今年は多い中、スカウトの評価として一番高かったピッチャーに行こうと、最終的に決めました。西武さんが先に公表されていましたけど、それをもってしても、武内くんじゃないか、というところで決めました」

――1年目からローテに入れる投手。
「入れるんじゃないかなと思います」

――青学大の常廣投手や下村投手など、大学生の投手に好投手が多い。それらの投手と比べて武内投手を高く評価した理由は。
「まずはその制球力っていうところは、来年、1軍のローテーションに誰が一番入る確率が高いかっていうときには一番、安定的に武内くんが入ってくるんじゃないかな、というところ。あとはフォームといいますか、腕の振りと球速がマッチしていないので、当然バッターは差し込まれるというところの部分というのは、やろうと思って出せる部分じゃないので、武内くん独特のものじゃないかな、と。やはり九州出身というのは大きな部分であったんじゃないかな、と思います。特に福岡で。常廣くんなんかも大分ですけどね」

――かなり迷った。
「迷いました。決めずにここまで来ようと。当然、絞り込みはした中で、例年このタイミングまで決めないということはないので。もうちょっと早いタイミングで例年は決めてきていたので、今年は本当そういう意味でも迷いながら最後まで来た」

――やはり1位は先発投手だった。
「その素材感ありきの中で、今年のドラフト市場がそういう(先発投手が豊富な)市場になって、うちのニーズとも合ったっていうのが大きなところかな、と。実際のところ、例えば、佐々木麟太郎くんがプロに行きたいみたいになった時に、どういうふうに評価していこうかみたいなのは多分議論にはなったんじゃないかなと思います」

――ドラフト全体の指名のイメージ、投手野手のバランスはどうなるか。
「ピッチャー中心にいきたいなとは思うものの、ここまで1年かけてスカウトが準備してきた評価リストみたいなものを、どこまで崩すかっていうのもある。他の11球団の指名を見ながら、うちのリストと合わせながら進めていくので、最終的にどうなるかみたいなところは僕らも見えていないところはあるんですけど、心情的には投手の補強というのは進めたいなと思っています」

――即戦力と育成のバランスは。
「そのあたりはあまり意識はしていないんですけども、当然、入札に行く武内くんは大学生ですし、縁がなかった場合、その後、結果的にバッターが1位になる可能性もあるし、高校生が1位になる可能性とかは出てくるかなと思うので、その辺は評価の通りにいきたいな、と思います」

――外れ1位含めて九州を重視する。
「いや、そこはもう評価を決めたので、その順番に下がっていきたいと思います」

――育成選手も多く指名する?
「人数に関しては本当に読めないところがあって、我々が準備しているリストの中の選手がどの辺りで、他球団とのバランスで抜かれていくのかで、5人とか6人指名したいなと思っていたのが、いなかったりもしますし、というところもあるので。ちょっと難しいですけど、リストにある決めている中は行きたいなと」

――公表した理由とは。
「基本的には本当に最後までいろんな議論を重ねて決めたいなっていうのがあったので引っ張った。いつもは、去年、一昨年もそうですけど、ちょっと早いタイミングで公表させてもらったっていうのは、今日もそうなんすけど、決めたらもう変えないので公表しようかっていう話に、監督、会長含めて話したので。この後も迷うのであれば、おそらく公表しなかったと思います。そのタイミングが今年は本当にここまで来たっていう感じで、戦略とかで公表を今日するみたいなことではなく、もう変えないので公表しましょうっていうところです。もう少し早くに決まっていれば、もう少し早くに公表したのかもしれません」

――今年の戦いからチームの補強すべきポイントは。
「データでいくと、当然、ピッチャー、特に先発ピッチャーの成績っていうのは出ていると思うんで補強したいと思う。ただ、それが本当に1軍の成績がドラフトだけで埋まるのかっていうのもちゃんと編成部隊として考えていかないといけない。もう1軍の戦力をドラフトだけで埋めようというのはちょっと難しいと思うんで、ドラフトは将来的なチームの幹になってくれる選手を取っていきたいという場所でもあるので、その辺はバランスを考えながら、FA、外国人も含めてやっていきたいなと思っています」

――武内投手は3軍戦で投げている。
「印象、良かったですね。見に行って、國學院のグラウンドでやったんですけど、手も足も出なかったです」

――東洋大の細野投手とはまた違うタイプ。
「細野くんの方が少しボールはバラついているのかも分からないですね。ただ、質という部分では、細野くんもすごくいいボールがあると思います」

――和田投手に憧れているとか。
「本当ですか? 身体のサイズは違うんですけど、真っ直ぐで空振りを取るっていうところはちょっと(和田)毅に似ているかな」

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)