3回の窮地は「ヘルナンデスしかいなかった」 首脳陣が語った助っ人左腕投入の思惑

ロッテ戦に2番手で登板したソフトバンクのダーウィンゾン・ヘルナンデス(左)【写真:荒川祐史】
ロッテ戦に2番手で登板したソフトバンクのダーウィンゾン・ヘルナンデス(左)【写真:荒川祐史】

先発のスチュワートが誤算「悪いところが露骨に出た」

 ソフトバンクは14日、敵地・ZOZOマリンスタジアムで行われた「パーソル クライマックスシリーズ パ」ファーストステージのロッテ戦に2-8で敗れた。先発したカーター・スチュワート・ジュニア投手が初回に2本塁打を浴びるなど、3回途中4失点でKO。その後もロッテ打線の勢いを止められずに8点を失った。打線も柳田悠岐外野手が放った2ランのみに終わり、後がなくなった。

 スチュワートが誤算だった。初回、荻野に先頭打者本塁打を許し先制点を献上。2死からポランコにも逆球を右中間スタンド中段まで運ばれた。いきなりの2失点。2回こそ3人で切り抜けたが、3回に先頭の中村奨に四球を与えると、犠打で1死二塁となり、そこから藤岡、角中に連続四球。満塁のピンチを招き、ベンチも堪らず、交代に踏み切った。

 3回途中という早すぎる降板。斎藤学投手コーチは「あれだけストライクが入らなくなっちゃうと、代えざるを得なかった。ジュニアにとって1番の課題というか、悪いところがもう露骨に出たっていうところ」と語る。突如として乱した制球。これ以上の失点は防ぎたい、というところで交代に踏み切らざるを得なかった。

 驚きだったのが、この大ピンチでダーウィンゾン・ヘルナンデス投手を2番手で投入したことだった。

 シーズン途中に加入した左腕は8月23日、同じZOZOマリンスタジアムでのロッテ戦で来日初登板し、3安打2四死球2失点。ポランコにソロを打たれるなど、1回もたずに降板すると、その後はベンチ外が続き、8月27日にわずか一度の登板で2軍降格に。2軍行きを告げられた仙台では、大声をあげて怒りを露わにしていた。

 リバン・モイネロ投手の離脱で、藤本博史監督の要望で獲得しながら、一度は“見切った”はずの左腕を、この重要な一戦、これ以上の追加点を与えられない重要な局面でなぜ投入したのか。斎藤学コーチはこう明かす。

「あれからしばらく経って、ファームできちんと投げ出して、ストライクも入るし、変化球でもストライクを取れるというところで呼んでいる。あそこまでプレッシャーのかかるところじゃないところで投げさせてあげたかったけど、今日の展開ではあそこはもうヘルナンデスしかなかった」

 打順の巡りとしてはポランコ、安田と左打者が続く場面。この日のベンチに、左腕はヘルナンデスのほか、嘉弥真新也と笠谷俊介がいた。左キラーといえば嘉弥真だが、投入するには早すぎる場面。相手の左右による選手起用を重視する藤本監督だけに、この場面で送り出す左腕は「ヘルナンデスしかいなかった」というのだ。

 結果的にヘルナンデスはポランコを遊ゴロに仕留めた。併殺を狙った三森大貴内野手の悪送球で痛すぎる2点を奪われてしまったものの、続く安田も二ゴロに仕留めて無安打無失点。斎藤学コーチは「あれで使えるんじゃないかなというメドが立った」と語ったが、チームはもう崖っぷち。“使える”どころか、もうあとがないところまで追い込まれた。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)