鷹フルがお届けする主力4選手による月イチ連載、周東佑京選手の「10月後編」です。今回のテーマは「大谷翔平投手」。3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でもチームメートだった大谷投手は、日本人では初となるMLBでの本塁打王に輝きました。そんな世界が誇るレジェンドとの、印象的な初対面とは? 大谷投手から“逆質問”されたこととは? 周東選手なりに見る大谷投手の素顔に迫ります。
MLB、ア・リーグの全日程が終了。大谷は44本塁打を放ち、日本人では初の本塁打王に輝いた。右肘の手術で終盤は出場していなかったものの、2位に5本差をつけて“キング”となった。春先に“チームメート”として戦った周東も「いや、すごいなって。ただ普通にすごいなって思います」とただ感嘆する。2020年には13試合連続盗塁という世界記録を打ち立てたが、「比べられないです。天と地の差ですよ」と苦笑いするしかなかった。
今年2月17日から、侍ジャパンの代表合宿が宮崎でスタートした。周東もそこに参加していたが、大谷の合流は少し経った3月3日。中日との壮行試合(バンテリンドームナゴヤ)からだった。面識もなければ「生で見たこともないです」という雲の上のような存在。挨拶に出向いた時の、ドキドキの初対面を、こう振り返る。
「『大谷さんだ』『テレビで見ている人だ』って思いました。あとすごく体デカイなって思いました。挨拶しましたよ、『周東です』って。『何歳ですか?』って聞かれて。『1個下です』って話をしましたね」
代表としての活動期間中、何度も決起集会が開催され、そこには大谷も周東も参加していた。周東から見る大谷の人柄は「誰にも変わらないなって思います。上の人であれ、下の選手であれ。飾らない感じで」と語る。誰にでも自然体だった姿が印象に残っているようだ。“飾らない”といえば、柳田悠岐外野手を表現する時にもよく使われる言葉。比較すると「ギーさんとはまた違うのかなって思いますよ」と言う。
チームは決勝戦にまで勝ち進んだ。アメリカ戦の試合前、大谷の声出しが野球ファン、国民の心を射抜いた。「憧れるのを、やめましょう。憧れてしまったら、越えられないので」。そう話す大谷の姿を、周東は背中側から見ていた。「全員からサイン欲しい、写真撮りたいくらいでしたけど。やっぱりこれから戦う相手ですし、本当にそうだなって」と、自分自身にも言い聞かせた言葉だ。日本に帰ってきても、なるべく大谷の動向や成績には注目していたという。
「ニュースで知るくらいでしたけど、大谷さんが出ている試合は見ていました。本当にすごいなって思いながら。ロッカーのテレビで、つけて見たり。大谷さんが出たり出なかったりにかかわらず、エンゼルスの試合は結構日本でやっていることが多いですから。あとは千賀さんが投げる試合も見ていました」
ホークスは9日のオリックス戦(京セラドーム)を終えて、レギュラーシーズンの全日程が終了した。周東自身も36盗塁で3年ぶり2度目の盗塁王に輝くなど、足からチームに貢献したシーズンだった。WBCは結果が全ての短期決戦。3月から半年が過ぎ、世界を舞台に戦った経験は、どんな形でシーズンに生きていたのか。
「いろんな選手のいろんな話を聞いて。悪い時とか、切り替えたり、そんな落ち込まなくなったというか。『別に』って言い方するとおかしいですけど、ミスしてもまた次やればいいって考え方に、今はなっているかなって思いますね。結果も気にはしますけど、気にはしすぎないようにっていうのはできています」
8月25日の楽天戦(楽天モバイルパーク)では、三塁守備で飛球を落としてしまい、逆転負けを喫した。痛恨の失策だったがその際も「悔しいのもありましたけど、今回はそんなに引きずらなかったです。引きずる時期でもなかったですし、次の日も試合に出るかもしれなかったので」と話していた。失策をして涙を流したこともあるが、その心は着実に、何倍も成長を遂げている。
10日の楽天-ロッテ戦(楽天モバイルパーク)。ホークスの順位が決まる一戦でもあり、盗塁数は楽天の小深田と並んでいたが、「子どもと遊んでました(笑)」と言うのも周東らしい。14日からはクライマックスシリーズが開幕する。「塁に出られれば得点パターンを作れる。(ファーストステージは)長くても3試合ですし、イケイケドンドンじゃないですけど、積極的に行けたら」と誓った。長かった2023年の戦いも、あと少しだ。