なぜ3年連続でV逸? 元コーチ飯田氏が敢えて向ける苦言「このままだと暗黒時代」

ソフトバンク・藤本博史監督【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・藤本博史監督【写真:荒川祐史】

3年連続のV逸は2010年以降では最長「若手が出てこない」

 ソフトバンクはクライマックスシリーズ(CS)進出を楽天、ロッテと激しく争っており、逆転での日本一への道はまだ残っている。しかし、ダイエーからソフトバンクとなって初優勝した2010年以降では、初めて3年連続でリーグ優勝を逃した事実も残った。現役時代に盗塁王に輝くなど走攻守3拍子揃った外野手としてヤクルトや楽天で活躍し、引退後にはソフトバンクのコーチも5年間務めた野球評論家の飯田哲也氏が“V逸”の要因を分析した。(記録は9月28日終了時点)

「若手の層が薄い。チャンスを勝ち取ったのではなく、与えてもらっている感じ。若手が出て来ないで、ベテランも増えてきている」。4軍まで備える充実の環境で“候補者”は多くいるのに、新陳代謝が活発化していない。「このままだと“暗黒時代”のようなことになってしまうかもしれませんよ」。飯田氏は叱咤激励の意味を込め、あえて過激な表現で警鐘を鳴らす。

 中でも、語気を強めたのが投手陣について。「本当に期待外れでした」。メジャーリーグのメッツに移籍した千賀滉大の穴が埋まらなかった。「先発がピリッとしなかったですね。結局、1年を通して投げた人がいなかったでしょ」。パ・リーグの球団で唯一、規定投球回に達している投手がいない。

 チームトップ10勝の有原航平は日本球界復帰1年目で6月に1軍昇格し、チーム2位の7勝を挙げている和田毅は42歳。「当初ローテに入っていなかった有原が勝ち頭、2番目が大べテランの和田という現状は、どうなんでしょうか。最初から期待されていたピッチャーは、何やってんだということになりますよね」と首を傾げる。

 エース格と目された石川柊太はノーヒットノーランの快挙こそ達成したものの4勝7敗、過去に最多勝の実績を持つ東浜巨は6勝7敗。ともに黒星が先行している。「エースっていうエースがいない。相手チームが石川が先発の時に『嫌だな』と思うかどうか。エースは試合前半で崩れちゃダメ。自分が投げるゲームは、中継ぎを休ませるくらいの貫禄と安定感が必要なんです」。飯田氏自身は野手だったとはいえ、外野から何人もの“本当のエース”の背中を見てきた。

 昨季台頭した大関友久は4勝。今季から先発に転向の藤井皓哉は5勝で、リバン・モイネロの故障離脱もあって再びリリーフに戻った。2人は体調不良や怪我にも見舞われた。「周囲は『化けてくれないかな』『一本立ちしてくれないかな』と考えていたシーズンだったんでしょうけど……。本人たちも一からやり直しと思っているでしょう」。

ソフトバンク・甲斐拓也【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・甲斐拓也【写真:荒川祐史】

 ホークスが足踏みした3年は、オリックスが3連覇を果たした。1年前の2022年は勝率が同率ながら直接対決の成績で屈する紙一重の2位。それが今シーズンはゲーム差2桁と大きく水を開けられてしまった。両チームの差は何なのか。「完全に投手力の違い。エースの山本由伸を筆頭に、どんどん良いピッチャーが出てくる。若手が結果を出しますよね」。山本は25歳、宮城大弥は22歳、開幕投手に抜てきされた山下舜平大も21歳なのだ。

 飯田氏は、甲斐拓也に若手投手の育成を注文する。「彼のレベルならできるはず。侍ジャパンで正捕手もやってましたけど、代表クラスの投手の球なら誰が受けても抑えられますよ。若手がどうしたら良くなるのか、伸びるのか、試合を作れるようになるのか。リードを工夫して欲しいです」と求める。

ソフトバンクでコーチを務めた飯田哲也氏【写真:荒川祐史】
ソフトバンクでコーチを務めた飯田哲也氏【写真:荒川祐史】

 今季もそう思えるシーンが何度かあったという。飯田氏が言及したのは、23歳のカーター・スチュワート・ジュニア投手と甲斐のバッテリーの配球。米国でドラフト1位指名されたほどの好素材は真っ直ぐが魅力だが、その武器を狙い撃ちされる場面を見たという。「ストレートしかストライクが入らない時もあるでしょうけど、じゃあ、どうするんだという話。相手が打ち気100%で直球待ちなら内を突いて詰まらせるとか。その投手の特徴を見極め、生かさないといけません」。

 CS進出を成し遂げた場合、勝ち上がるポイントには石川、東浜の両投手を挙げる。「あの2人がビシッといかないと。もっとやらなきゃいけなかった今年、できなかった。でもCS、日本シリーズで活躍すれば帳消しになりますから」。今シーズンはまだ終わっていない。飯田氏は、“常勝軍団”のはずのソフトバンクに奮起を促す。

(鷹フル編集部)