左足負傷も首脳陣に訴えた思い「無理しても行きます」 周東佑京が出場を熱望した理由

ベンチから試合を見つめるソフトバンク・周東佑京【写真:荒川祐史】
ベンチから試合を見つめるソフトバンク・周東佑京【写真:荒川祐史】

29日の西武戦で左足を負傷…球団広報から説明「左ハムストリングの軽度の肉離れ」

 チームを助けたい“男気”が、ベンチからも溢れ出ていた。ソフトバンクは30日、日本ハム戦(PayPayドーム)に3-2でサヨナラ勝利。9回に柳田悠岐外野手が同点アーチ。1死から中村晃外野手がサヨナラ弾と、一気に試合をひっくり返した。そんな中、ベンチ入りを果たしたのが周東佑京内野手。左足を痛めながらも「無理しても行きます」と、首脳陣に熱い思いを訴えていた。

 周東は29日の西武戦(同)でスタメン出場するも、5回に代打を送られて交代した。この日午前に病院で受診し、診断結果は「左ハムストリングの軽度の肉離れ」。球団広報から説明され、試合前の練習にも姿を見せなかった。試合でも起用されず、藤本博史監督は「軽症ですからね。明日も使わないですよ。こっちは当然CSに行くつもりですから」と明言する。

 左足を痛めた中で、なぜベンチ入りを果たしたのか。試合後、周東は立ち止まって、報道陣の前で口を開いた。

「抹消じゃないからですよ」と当然のような口調で語る。藤本監督は「『代走行かせてくれ』って言ってきたけど残り試合もあるし」と、周東の前のめりな思いを制止したことを明かす。周東も「行きたかったですけど、止められたので。止められたという言い方もあれですけど、様子を見ようということで」と、冷静な判断を受け止めていた。“この先”を勝ち抜くなら、絶対に必要な戦力。最後までベンチを温めたが、中村晃の劇弾では歓喜の輪にも加わっていた。

 首脳陣に起用を訴えるほどの強い思い。今の周東を突き動かすのは、どんな思いなのか。「あと6試合なので、行きたいというか、行くしかない」と終盤戦であることが理由だとも言う。「僕自身がこんな状況ですけど、まだ必要としてもらえている。本当に早くよくなったら」と抹消せずにいてくれることに感謝しながら、ベンチの中でも最前に立ち、自分ができることを貫こうとしていた。

「出られないので、やれることはやらないといけない。怪我をしていているからって、シュンってしていても、何のためにベンチに入っているんだってなる。周りの選手もいますし監督、コーチもそういうふうに思われるので。いつもより声出そうって思いながら」

 診断結果についても「全然、こんな感じだろうなっていう」と受け止める。すぐに治ったとしても、患部を気にしながらのプレーを強いられるだろう。それでも周東の思いは「気にしながらになりますけど、140試合近くやっていて、この時期になったらみんな体はキツいと思いますし。元気にやっている方が難しいと思う」と、どこまでも熱い。少なくともチームの順位が決まるまで、どこまでも駆け抜ける気持ちだ。

「明日から行ける気持ちではいます。そこは僕が決めることではないですけど、僕としては行っても大丈夫というところまで持っていけたら。『走る』ができないと、自分はあれだと思うので。走るができて初めて“行ける”ってことになると思います。無理しても行きます。大事(おおごと)になっても、3か月くらい休みがある。CSが終わって、日本シリーズが終われば」

 楽天の小深田がオリックス戦(京セラドーム)で盗塁を決め、35盗塁で並ばれた。タイトル争いもデッドヒートが続いているだけに「気になりますけど……。私情を挟んじゃいけない時期だとは思うんですけど、どうしても挟んじゃう」とちょっぴり本音も覗かせる。最後の最後まで全力で駆け抜けた先に、きっと結果はついてくる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)