快挙達成の石川柊太が陥るスパイラル… 斉藤和巳コーチが訴える“割り切り”のススメ

18日の西武戦でノーヒットノーランを達成したソフトバンク・石川柊太(中央)【写真:荒川祐史】
18日の西武戦でノーヒットノーランを達成したソフトバンク・石川柊太(中央)【写真:荒川祐史】

18日に石川柊太がノーヒットノーラン…「まさかやね。まさかの“さか”」

 指導者となって、初めて自軍の投手が偉業を達成した。ソフトバンクの石川柊太投手が18日の西武戦(PayPayドーム)で自身初のノーヒットノーランを達成した。9回を投げて127球、4四死球を与えながらも8奪三振。白星自体も3か月ぶりだった中で、斉藤和巳投手コーチの視点から、石川の“ノーノー”を語ってもらった。「全部が全部、反省じゃない」と話した理由とは?

 初回から四球で走者を許したものの、テンポの良い投球で西武打線を抑えていった。偉業に対する第一声は「まさかやね。まさかの“さか”」と嬉しそうに話す。指導者となって初めて立ち会った快挙に対しては「初めて感はなかったけど」というが、継投の判断が投手コーチの大きな役割の1つ。「今年初めて、仕事がなかった。何にもすることがなかった」と投球を頼もしく見守ることができた。

 この日の石川の技術面で優れていた部分には「適度に荒れていたことじゃないですかね。相手打者も早打ちをして打ち損じもあったし。バックも守ってくれた」と分析する。無失策の守備陣も石川を助けてくれた。打線も10安打8得点で「相手にダメージを与えるような得点をしてくれた」と野手への感謝も忘れなかった。

 斉藤和コーチは、2006年6月8日の巨人戦で1安打の無四球完封を経験。内野安打を許したものの、一塁牽制でアウトにしたため、打者27人で試合を終わらせた。「俺は結局(1安打)打たれているからね」と笑ったが、偉業まで“あと一歩”だったからこそ、無安打に抑え込む難しさも知っている。

 石川にとって5月19日の西武戦(PayPayドーム)以来、3か月ぶりの白星となった。6月10日の巨人戦(同)で4回途中6失点を喫した時には、斉藤和コーチは「石川に聞いて。何を語るのか、楽しみにしてる」と記者を制してドームを去るなど、厳しい視点も持ちながら取り組みを見守ってきた。

 結果がついてこない時期は、これまでの指導者からも「考えすぎる」と表現されるなど、石川が入ってしまいがちな“スパイラル”。その点について「みんな考えすぎているところがあると思う」と踏まえながら、斉藤和コーチなりの視点でこの3か月について言及した。

「考え方じゃない? 考えることが悪いことだとは思わへんし、考え方が大事なんちゃうかな。そこがどうなんかなって思うことは、石川だけじゃなくてみんなに対してある。自分を苦しめるような考え方をする必要はない。どう物事を捉えるか。捉えるかだけじゃなくて、どう次に生かすか、何をするべきかっていうのをちゃんと自分で(理解しないといけない)」

 反省をすることは、選手として当然のこと。その方向性を間違えてはいけないと、斉藤和コーチは言う。「全部が全部反省じゃないからね。これはOKにしておく、とか。何人かには話はしているけど『反省するべきところと、いいところは分別しておけ』って。悪いから全部が反省じゃないし、いいところは残しておかないといけないから」。その日の内容を踏まえながら、次の登板に対して向かっていけるような捉え方をしてほしいと強調した。

 石川はノーヒットノーランの後に「いい意味で自分も『まさかできるとは』って話をした時に、和巳さんも『まさかできるとは、俺も思っていなかったよ』みたいな感じで。いいコミュニケーションで、そう言ってくださって。期待に応えられた喜びというか、次もいいピッチングをしてそういう姿を見せたい」と明かしていた。石川はこれがまだ4勝目、チームは現在3位だ。全てをきっかけにして、上位進出を狙いたい。

「(きっかけに)なってもらわないと困る」と、斉藤和コーチもすぐに表情を引き締めていた。自分自身はもちろん、支えてくれるさまざまな人を喜ばせる1勝となった。

(竹村岳 / Gaku Takemura)