初対面から、たった3日で仲良くなれてしまう? 後輩が語る、驚くべき“コミュ力”だ。その能力者とは、ソフトバンクの周東佑京内野手。昨オフに自主トレをともにした川原田純平内野手は、佐賀・嬉野市で1週間、宮崎・都城市で2週間を一緒に過ごし、周東への印象は「変わりました」と語る。間近で見た先輩の素顔を、鷹フルに語ってくれた。
会話をする機会が増えたのは、2021年9月に周東が右肩を手術したとき。川原田も当時は戦線から離れており「僕もリハビリ生活が長くて、その時も結構話しかけてくれました。先輩の中でも、接しやすい方」だった。7学年も上の大先輩ではあったが、その年の差を感じさせない気さくさ。辛くても前だけを見ないといけないリハビリ生活だからこそ、余計に心強かった。
川原田はプロ1年目が終わった2021年のオフ、現役時代の本多雄一2軍内野守備走塁コーチを支えたトレーナーのもとで自主トレを行なった。過去には周東も世話になっており、“共通項”が生まれた。そして1年後の2022年オフ、「流れで、そうなっていきました」と一緒に自主トレをすることに。3週間、同じ空間で過ごす中で、シーズン中には見えなかった先輩の素顔に接した。
「普段はふざけているっていうか、そんな感じじゃないですか。明るく、というか。でも練習になったらガラッと変わります。目つきとかも。本当に、練習が始まったら集中しているのが伝わってきて。自主トレでも全体のメニューが終わってから毎日ウエートとかもしていたので。すごいなって思います」
ランメニューや体幹メニューのインターバル中では、笑顔も見せる。しかし、練習が再開された途端に“目つきが変わる”というほど、オンとオフのスイッチははっきりしている。「『きつい、きつい』とか言うんですけど、全部やるんです。手を抜かないですね」。昨季1軍では1試合出場にとどまった川原田。「佑京さんもやっているから、僕もやろうという感じになれた」と、プロとしての姿勢を教わった。
自主トレでは同じホテルに泊まり3食もともにするなど、ほぼ同じ時間を過ごした。普段から会話するチームメートだったとはいえ、自主トレの前と後では、印象が一変。明るさの裏で「練習は手を抜かないし、活躍する人はそういうところをちゃんとやっているんだって、間近で見て思いました」と背筋が伸びた。
一瞬で切り替えられる集中力は、結果にもつながっている――。川原田なりに、そう考察する。7月30日のロッテ戦(PayPayドーム)、周東は延長11回にサヨナラ打を放った。2022年も2度のサヨナラ弾を記録するなど、後輩から見ても「結構打っているイメージがあって、そういうところ(勝負所での集中力)につながるのかなって感じます。(ロッテ戦でも)『あ、打つな』って、僕も感じたので」。集中力が画面越しに伝わってくるほど。勝負強さには、“裏付け”があると思っている。
グラウンドを離れれば、どうだろうか。昨オフの自主トレではホークスだけではなく巨人の松原聖弥外野手、オリックスの廣岡大志内野手(当時は巨人)らとも汗を流した。「ホテルではあんまり野球の話はしないですね」。先輩たちとは、少し年が離れている川原田。「僕は松原さんとか廣岡さん、佑京さんの会話が面白くて。それを聞いて笑っていた感じです」と“聞き役”に回っていたそうだ。
1995年1月生まれの松原と、1996年2月生まれの周東。「2人は初対面だったんですけど、めちゃくちゃ相性が良くて。佑京さんの方が1個下なのに、すごかったです」と川原田は思い出す。自主トレの序盤に「3日目くらいから、もう昔から仲良かった感じが出ていて。コミュニケーション能力は長けていました(笑)」と、あっという間に距離を縮めた2人に驚いた。周東への印象が変わるには、十分すぎるほど濃密な3週間だった。