持ち味が存分に発揮された投球だった。ソフトバンクの有原航平投手が、25日のオリックス戦(京セラドーム)で先発し、9回を無失点。今季初、自身3年ぶりとなる完封勝利を挙げ、チームの連敗を「12」で止めた。有原が7回6失点で初黒星を喫した7日の楽天戦(楽天モバイルパーク)から54年ぶりの大型連敗がスタート。「自分から始まった」と責任を背負って過ごしてきた。初回から3イニング連続で奪った併殺に、有原の“凄み”が詰まっていた。
「今日は落ちるボール、フォークが良かった。三振も取れましたし、カウントも取れました」と好投の要因を挙げる。結果的に9回を投げ切って2四球、11奪三振。日本ハム時代の2019年7月5日の楽天戦で記録した「11」以来、日本球界では4年ぶりの2桁奪三振となった。「数は意識していないですけど、無駄な球を使わないことは意識して。その結果、三振を取れました」と分析する。
初回無死、中川圭の打球を三塁の栗原陵矢外野手がファンブルし、走者を出したものの、1死後、紅林を遊ゴロ併殺としてピンチを切り抜けた。野手のミスから生まれたピンチに「絶対にカバーしないといけない。いい結果でカバーできてよかった」。2回1死一塁では宗を遊ゴロ併殺、3回無死一塁では野口を一ゴロ併殺と、3イニング連続の併殺打でピンチの芽を摘んだ。納得の表情で、そのシーンを振り返る。
「ああやって守備もいい形で守ってくれたので、すごく助かりました。僕の持ち味はゴロを打たせる投球なので、あそこはイメージ通りにうまく打たせることができました」
ある程度“意図的”だったというのだから、さすがの一言だ。3併殺のうち、初回の紅林と3回の野口はカットボール、2回の宗はチェンジアップだった。6回2死一塁で四球を与えたところで、斉藤和巳投手コーチがマウンドへ。「『このバッターで』って。『切り替えてこのバッターで行くぞ』っていう話をしました」と一言だけ言葉を交わすと、紅林もフォークで空振り三振。152キロの直球もあったが、とにかく変化球が際立った内容だった。
8回を終えて104球。9回に2点を奪って、5点差となったことも完封勝利を後押しした。藤本博史監督も、「有原がよく投げてくれた。緩急をうまく使ってね。素晴らしいピッチングだったし、“有原さまさま”」と絶賛した。9回を託された首脳陣とのやり取りについても、有原は「『いけるだろ』って言われたので。もちろん僕もそのつもりだったので。『もちろんです。最後まで行きます』って言いました」と明かす。
有原にとっては、これが後半戦初の先発だった。「僕から始まっている連敗でもあった」。15日のオリックス戦(PayPayドーム)以来、中9日で迎えたマウンド。115球は今季2番目に多い数字で「オールスター休みもあって、間隔もすごく開いていた。とにかく球数が増えても全部行く気持ちでした」と話す。連投していたロベルト・オスナ投手、松本裕樹投手も休ませる価値のある完封勝利だ。
24日のロッテ戦(ZOZOマリン)、チームは1点をリードした9回2死一塁から角中にサヨナラ2ランを許して敗れた。あまりにもショッキングな負け方で、連敗ストップは有原に託された。ゲームセットの瞬間、有原は大阪への移動中だったといい「自分のことだけに集中した結果が、今日の結果だと思うので。勝ててよかったです」と振り返る。最高の結果で応えたのだから、頼もしすぎる右腕だ。
「もちろん重圧もありましたけど、自分のできることっていうのを意識して。今日こうやって勝てたので、少し自信にしてもいいのかなって思います」
ここまでカード頭を任されながら、安定感あふれる投球でチームを救ってきた。山本由伸との投げ合いを制したこの日の投球。「自信にしてもいい」と言う表情からは、力強い自覚と責任感が伝わってきた。