156キロもヒットにされ「ボール強くなかった」 3試合連続失点中の胸中は
少しホッとした表情だった。“4連投”に本人が語った胸中とは――。ソフトバンクの甲斐野央投手が17日のオリックス戦(PayPayドーム)に登板して1回無失点。4登板ぶりに無失点で抑えて「どんな形であれ、無失点でベンチに帰ってくることが大事だと思っていました」と結果にこだわっていたことを明かした。
3点を追いかける9回にマウンドへ。先頭の頓宮には右前打を許す。1死二塁となり、杉本の痛烈なライナーは右翼へ。周東佑京内野手が捕球すると、外野が前進守備だったことにも助けられ、二走も飛び出していた。併殺となり「“ツキ”もありました」と胸を撫で下ろす。無失点という結果だけが、自分の心も救ってくれた。
甲斐野は10日、12日、13日の西武戦(京セラ、北九州、PayPayドーム)に登板。15日のオリックス戦(PayPayドーム)でもマウンドに上がり、日にちが空いたものの“4連投”していた。12日から3試合連続失点。結果が残せない中でもマウンドを任せてくれたが、4試合連続での登板を、甲斐野自身はどう受け止めていたのか。
「1日休みも挟んでいましたし、体自体は全然問題なかったです。投げている映像を見ていても球自体は変わりはなかったんですけど、ちょっと変化球が抜けていて、高めに抜けるというよりはコース抜けがあったので。そういう意味では体のキレっていうのはなくなってきていたのかなって感じていました。それは修正しようと思って投げていたんですけど、できずに失点したのは自分の弱さかなって」
起用を真っ直ぐに受け止めた。この日、先頭の頓宮に許した右前打は156キロを計測。持ち味の真っ直ぐを弾き返されて「軽打してきたのでうまく打たれました。真っ直ぐもケアされていたので」と振り返るが「ボールはいつもみたいに強くなかった」という。甲斐野自身も「体のキレはなくなっていた」と話すように、連投の影響はゼロではなかっただろう。
その上で「色んなことが重なって考えて投げてしまっていた。割り切りが大事って感じました」と、少し自信をなくしてしまっていたことも認める。どれだけ前向きに過ごそうとも、マウンドでゼロを並べることでしか取り戻せないものがある。失点が続いてしまった日々について「どう乗り切るのか、自分の中でも課題だった。(今日は)大事な登板になると思っていた」と、結果から一切逃げずに、無失点で抑えることだけを考えていた。
3試合連続での失点の中で、2試合で四球を与えていた。四球を減らすことを目標に掲げてきただけに、結果にも内容にも納得がいっていなかった。「それも自分の弱さ。最初が良くても、後半ずるずるいってしまうと、それだけの実力だと実感したので。改めて気を引き締めていかないといけないって、まだまだ感じています」。今季23試合の登板で与えた四球は6個。数自体は減っているからこそ、この日の無失点はまた自信につながるはずだ。
「これを乗り越えられたのはいい経験になりました。ここからまたいい流れに持っていけたら」。そう語る表情は、少しだけ自信に満ちていた。チームは9連敗を喫し、苦しい戦いが続いている。その中でも、得た貴重な経験を力に変えようと、選手は戦っているのだ。
(竹村岳 / Gaku Takemura)