レギュラーである以上、自力で乗り越えていくしかない。苦しい夏場、チームとしても個人としても壁にぶち当たっている。ソフトバンクは12日、西武戦(北九州)に2-4で敗戦し、今季ワーストタイの5連敗を喫した。6安打に終わった打線について藤本博史監督は「相手もいることで、いい投手ばかり来ているから、そう簡単には打てないと思うけど、取れるところでしっかり取るってところ」と振り返った。5連敗のチームの中で特に気になるのが、牧原大成内野手の状態だ。
相手先発の今井を、立ち上がりから攻めた。初回、安打と2 つの四球で1死満塁とする。ここで牧原大は中犠飛を放ち、先制した。牧原大にとってこれが5試合ぶりの打点だった。2回も1死一、二塁から中村晃外野手の右前適時打でリードを広げた。だが、尻上がりに調子をあげた今井の前に4回以降は1安打。3回1死三塁で牧原大は三ゴロに倒れて追加点を奪えなかった。
牧原大は「左大腿二頭筋損傷」で4月下旬から1か月の離脱はあったが、ここまで56試合に出場。打率.285の打撃と、二塁と中堅を守る守備力でレギュラーとしてシーズンを送っている。しかし、7月に入って打率.190と苦しんでいる。首脳陣に、状態はどう見えているのか。試合後、長谷川勇也打撃コーチがこう語った。
「向こう(相手)からしたら、怖い打者ではあるので。やっぱりスイングスピードも速いし、怖さもある打者だから。攻め方が徹底していて、ずっとやられている感じはある。ここを乗り越えていかないといけない。技術的なことは大きく変えて良くなるって部分ではないと思うので、あとは気持ちの整理をつけてどれだけ“悔いを残さないか”っていうのを、ね」
6回無死は左飛、9回無死では遊飛に倒れた。長谷川コーチも「多分、今日の打席はほぼ悔いが残っていると思う。そうならないためにっていう“腹の決め方”をしてもらえたら」と続ける。現役時代に通算1108安打を放った長谷川コーチ。今の牧原大に当てはまる“悔いが残る”ような打ち取られ方というのは、どういうものなのか。少し、迷いも感じられるという。
「“らしくない”なっていうのは思います。らしくない。打ち取られないように、打ち取られないようにっていうのを考えすぎて、どうしても本来の良さが消えてきている。自分の打席では貫き通して、あとはどう転ぶかっていうのは“神様しか知らない”くらいで、開き直って立つしかないから」
チームは5連敗となり、オールスター前に1つのヤマ場を迎えている。5連敗中、牧原大の打順は5番、6番、6番、5番、5番。走者を“返す”側になりがちな、後ろの打順を任されている。上位を打ったのは7月4日の日本ハム戦(PayPayドーム)の2番が最後だが、長谷川コーチは打順は関係ないと話す。
「どこの打順に立とうと言えども、そこまで変わりはないかなと思います。先頭打者で立つケースが多い打者だとしても、今日で言えば同じ感じの打ち取られ方をしているでしょうし。場所とか打順とか関係なく、どうやったら自分の中で悔いを残さないかっていうところを、もう一度腹を決めてやってもらったら。そしたら、打っても打たなくても仕方ないと思って僕は見ているから」
首脳陣としてもレギュラーの1人として、スタメンを託し続けている選手。森浩之ヘッドコーチも「悲観していることはない。それでもまだ打率.285を打っているんやから」と改めて信頼を口にする。そして「外すことは考えていない。調子が悪いとしても使っているんだし、また3割くらい打ってもらうために、信用して使っているんだから」とキッパリ言った。
牧原大はレギュラーの1人であり、首脳陣もスタメンから外す考えは一切、頭にはない。言い換えれば、牧原大自身が復調することで乗り越えないといけない、ということだ。これまでホークスを背負ってきた先輩たちが、経験してきたであろう高い壁。誰よりもグラウンドに立つことにこだわる牧原大なら、必ず結果で報われる。