選手はグラウンドで、全力で戦っている。ソフトバンクは9日の楽天戦(楽天生命パーク)に1-5で敗戦。痛恨の同一カード3連敗となった。先発の石川柊太投手は111球を投げて、自責0ながらも6回4失点で4敗目を喫した。栗原陵矢外野手の失策が失点に絡んだが、誰よりも投手を助けたいと思ってグラウンドに立っているのが栗原だということも伝えたい。
石川にとって唯一の失点となったのは3回だった。1死から太田に四球を与えると、村林の打球を三塁の栗原がファンブル。平凡な打球ではあったがうまく握り変えることができずに、失策でピンチを広げてしまった。その後、小郷に同点適時打、浅村には右中間に勝ち越しの3ランを浴び、主導権を手渡してしまった。
降板後、石川は球団を通じて「浅村さんに上手く打たれてしまいましたが、浅村さんを迎えるまでのどこかで、もう少しなんとかできたんじゃないかなと思う」とコメントした。5月19日の西武戦(PayPayドーム)を最後に白星から遠ざかる。石川個人にとっても結果が重要な登板だっただけに、栗原が感じた責任も大きかっただろう。
大きく外れることなくローテーションを回っている石川だが、2か月近く白星が掴めていない。「俺がやらなきゃいけない、でも、やれない。もっと思わないといけないんじゃないのか、と思えば思うほど腕が振れなくなる」。責任感を持つがゆえに、自分で自分を追い込んでしまっていた。そんな苦しむ姿を見て、声をかけてくれたのが、他でもない栗原だった。
6月にあった出来事を、石川が明かしていた。
「栗原には『背負いすぎてやばいぞ』って言われました」
自分に重圧をかけて、マウンドで苦しみ、それでも戦う姿は伝わっていた。石川自身も「そういうつもりでやっているので、そこって難しいじゃないですか。野手の人はそう言ってくれるけど……」と自分が掲げる目標にも、チームの勝敗を背負ってマウンドに立つ責任感にも、向き合い続ける。だからこそ、この日の楽天戦は自分が結果で助けたかった。
栗原本人にも「背負いすぎてやばいぞ」の言葉の真意を聞いた。三塁から石川の姿を見守る中で「すごくチームの勝ち負けを背負っているのは見ていてもわかりますし。勝ち負けは(どうなるか)わからないですけど、すごく“らしくない”ピッチングというか、らしくない球が続いていると思っていた」という。責任感と、なかなか結果がついてこない“ジレンマ”の中で、もがいていることも伝わっていた。だから、そっと声をかけた。
栗原がどれだけ投手を助けたいと思っているのか、伝わってくる試合もあった。6月28日の楽天戦。先発はプロ初勝利を目指すカーター・スチュワート・ジュニア投手だった。1点をリードした6回2死一、三塁で、栗原がスッとマウンドまで声をかけにいった。「間を取るっていうのと、1回滑って四球になっていたりとか、ピンチになって気持ちが入っているのもわかったので。『落ち着いて、リラックスして。大丈夫だよ』って」と明かす。
結果的に島内の打球が栗原のもとに飛んできた。三塁線の難しい打球だったが、なんとか処理。チームも接戦を制したのだから、価値のある好プレーだった。その日のスチュワートの姿に「もちろん必死に投げているのは伝わりますし、なんとかゼロで帰ろうという気持ちも伝わってくる。野手がしっかりと応えてあげないとって思います」と、熱いものをしっかりと受け取っていた。
「それはカーターだけじゃないですけどね。誰が投げていても、できることはやらないと」
今季から本格的に挑戦している三塁守備は「まだいっぱいいっぱいですよ」という。副主将を務めるものの、チームの勝敗や自分の人生など、何かを“背負う”ということも「簡単なものではないと思いますし、まだ僕はそこまでのレベルには達していない。もっともっと自分のことも考えないといけない」と、栗原自身もまた理想と優勝だけを目指してグラウンドに立っている。
スポーツである以上、勝利か敗北、どちらかの結果は出てしまう。結果から見ても、この日の楽天戦での失策は確かに大きかった。それでも、投手と野手はそれぞれが「助けたい」と思ってグラウンドで戦っているもの。栗原にも、石川にも言える。一生懸命な姿は、いつか必ず報われる、と。