支配下登録の期限まであと3週間ほど。育成ドラフト13巡目ルーキーの西尾歩真内野手は自身の現状を受け止め、アピールを続けている。プロとして迎える初めての“7月末”。1年目といえども、危機感と焦りを感じて過ごしている。
「少し前までは『時間がない、時間がない』と思い、打率が気になっていました。『打たなきゃ』っていう気持ちで結構、早打ちになって、ちょっと厳しいボールでも初球から打ったり。攻める気持ちはあった方がいいと思うんですけど、ちょっと慌てていたというか、強く意識しすぎて……。いつもならファウルになるところをフェアにしてしまったり、打たなくていいボールを打って凡退したりとかが多くなって。明石(健志2軍打撃)コーチにも『ボールの選択ができていない』と言われました」
支配下登録の期限が近付いてきたことで、焦る気持ちが次第にプレーに表れ、悪循環に陥っていた。本来、持ち味であるはずのミートセンスや選球眼も鳴りを潜めていた。西尾は自分の中にある焦りを自覚し、冷静さを取り戻すように努めた。
「最近はちょっと三振も減ってきて、四球でもいいから塁に出ようと。初球から打ちに行くんですけど、打ちに行った中で、自分の決めてないコースとかが来たら、打たないっていう冷静さが出てきたかな。そんなに長打を打てるバッターじゃないので、ファウルで粘ったりとか、ピッチャーに多く投げさせたりとか、出塁率、しっかり四球を選ぶとか、できることでアピールします」
こちらも課題が残る守備面では、本多雄一2軍内野守備走塁コーチとホームゲームの全体練習前に行う早出の守備練習が日課になっている。「(本多コーチは)聞いたらその分返してくれるし、(自分の気持ちが)伝わっているかはわからないですけど、自分上手くなりたいので……。いろいろ教えていただいて、贅沢です」と本多コーチへの感謝は尽きない。
早急に改善すべきなのが「股関節の入れ方」だという。「まず、力が抜けていると言われて。技術のことばかり考えていたんですけど、まずやるべきことはそこからでした。やり始めて、ちょっと“入る”感覚っていうのがわかってきて。そうすると、自然に楽に捕れるし、ボールも見やすくなったんです。身体が硬い上に、股関節がはまらないから、送球にも力が入らず、強い送球がいかなかったり、ブレたりしていたんです。股関節の硬さはこれから直していくところなんですけど、まずはその意識が大事でした」と課題を説明する。
教えてもらったことを体現するには、自分自身の感覚も大切になる。「あまり運動神経は良くないんです。泳げないですし」という西尾。決して器用ではなく、本多コーチに見てもらいながら反復練習を繰り返す。「その都度その都度、『ここはちょっと違うな』とか教えていただいて、自分でもだいぶ『ここが良かった』『ここがダメだった』っていうのがわかってきました。本多コーチは『守備はやったらやった分だけ上手くなる』って言っていたので」。現役時代、ストイックに練習を重ねて実績を残した本多コーチに食らいついている。
ライバルの存在もヒントをくれた。「気になりますし、負けたくないっていう気持ちはある」というのが、2年目の仲田慶介外野手。同じ育成で、二遊間でコンビを組む1学年上の先輩は、様々な気付きを与えてくれた。「仲田さんは股関節も柔らかくて、しっかりボールを下から見ている。打撃でも仲田さんはアウトの内容もいいんです」。西尾は“泥臭さ”が売りのライバルの姿からも学び、自らに生かそうとしている。
ホークスに残された支配下登録枠は2つ。チーム事情やポジションの問題も絡む“狭き門”。残された期間は3週間。西尾は今出来ることを着実に、地に足を付けてアピールしていくつもりだ。