待望の1軍昇格となった。ソフトバンクの椎野新投手が5日、出場選手登録された。ウエスタン・リーグで24試合に登板して2勝1敗3セーブ、防御率1.38。今季初の1軍昇格に「自分の球を投げられれば、それだけでいいかなと思います」と冷静に話した。藤本博史監督は「中継ぎのところが大変なので10人体制にしておけば」と説明。リリーフの一角として、ブルペンを支えることになる。
椎野は昨オフから先発転向を目指して調整を進めてきた。オープン戦では7試合に登板して防御率2.84。開幕前の最後の“ふるい落とし”で生き残ることはできず、ファームでは中継ぎで調整してきた。その中で椎野は「(1軍に)呼ばれるためにやってきたわけではない」という。そこには椎野なりに過ごしてきた、開幕してからの3か月の取り組みがあった。
ファームでしっかりと結果を残す中で、5月に1度、調子を落としたという。「そこにポイントはありました。ちょっと言えないですけど、色々ありました」。慎重に言葉を選びながら明かしたのは、自分自身が生まれ変わらないといけないと思った出来事だった。具体的には明かさなかったが、椎野の中で何かが変わったのは確かだ。
「色々、感謝が足りていないっていうタイミングがあって、そこで僕の中のマインドが切り替わった瞬間がありました。そこでV字回復したというか、良くなってきた感じです。初心に帰ったというか、結果の前に、まず感謝かなっていうのが先に来る。結果は変わらないから、そこまで自分ができることをしていかないといけないです」
頑張らないといけないと思った出来事もあった。まだ2軍にいる頃、家族を乗せて、車でPayPayドームの近くを通ると、2歳の息子がこう言った。「パパ見たいね」「パパ行きたいね」。愛息からの真っ直ぐな願いをただ受け止めるしかなかった。息子はもう野球をテレビで見るほどに理解しているといい、5日はドームで観戦する予定だ。ようやく“ドームで投げるパパ”を見せられる時が来た。
今季の最速は「直近の3試合くらい」で計測した153キロといい、明らかに状態は上昇曲線を描いている。理想の直球を「投げ下ろしの強い球って感じです。今はスピードも出ているので、どこまで上がっていくのかも(楽しみ)」と掲げる。196センチの身長を生かすために時間を過ごした。追い求めてきたのは「見てもらえる真っ直ぐ」という圧倒的なもの。ようやく首脳陣の目の前で披露するチャンスがやってきた。
「開幕前に抹消というか、2軍に行くことになって。あのタイミングで、もうこの際フォームをどうにかしようと思った。活躍以前にどれだけ見てもらえる真っ直ぐなのか、そこを求め始めた。そこがずっと結果になっています」
2019年には1軍で36試合に登板して5勝2敗、6ホールド、防御率3.13と活躍した。その年と比較しても「球自体は同じくらいじゃないですか。そこを求めたらダメだと思いますけど、似たような感覚かなと思う」という。心身ともに生まれ変わった椎野が、苦しい夏に新しい風を吹かせる。