足早にドームを去っていった。先発の石川柊太投手が3回2/3を投げて6失点で3敗目を喫した。先発としての役目を果たすことができず、チームも巨人を相手に6-10で敗戦。先発投手なら球団広報から送られてくる試合中の降板コメントも、この日は送られてこなかった。斉藤和巳投手コーチは「石川に聞いて。石川が何を語るのか、楽しみにしてる」と言葉を残して、ドームを去った。
初回、先頭の坂本に先頭打者アーチを許した。2回、3回と粘ったものの、4回に崩れた。2死一、二塁から大城に逆転3ランを浴びる。打線が3回に3点を奪って逆転した直後だっただけに、重くのしかかった。その後も巨人打線に飲み込まれ、この回だけで5失点。2死一、三塁から田浦文丸投手がマウンドに上がりピンチを断ったが、試合の展開を見ても、石川の内容が最後まで響いてしまった。
試合後の取材で、斉藤和コーチが現れた。取材に向かおうとする記者団に対して、質問されるよりも先に「石川に聞いて。石川が何を語るのか、楽しみにしてる」と力強い言葉で制した。試合終了から約30分後の出来事だった。
斉藤和コーチがドームを後にして、約2時間が過ぎた午後8時過ぎ、石川が姿を見せた。どんな時も足を止めて取材に応じてくれる石川は、この日も立ち止まる。律儀で責任感が強い男は、この結果と内容を、どのように受け止めているのか。
「投手陣の柱になろうと頑張っていますけど、なかなかうまくいかないです。見ている人は見ていると思って頑張るしかない」
石川の中で、技術的に思うようにいっていないのは出力の部分。「昔は置きにいって150キロとかが出ていた。それが出ていないわけじゃないですか」と自分なりに原因を分析している。具体的には「見つかってはいないというか……。見つけている場合でもないし、やりながら見つけていくしかない」というが、時間は待ってくれないことも誰よりも理解している。
斎藤学投手コーチは「カーブが抜けてしまって、死球もあった。組み立てがすごく難しくなる。柊太の持ち味を生かし切れないというか、それがずっと続いている」と話す。石川の持ち味がカーブであることは相手も理解しているだけに、乗り越えていかないといけない壁だ。「カーブが『ボールになるから投げない』では無理。ど真ん中でも開き直って投げていく中で何かをつかめれば」と、石川らしさを失うことなく復調することを首脳陣も望んでいる。
石川を取材する中でも、配球の話になった。斎藤学コーチの言葉を伝えつつ、ここでも真っ直ぐに現状を受け止めていた。
「配球が……とかもありますけど、そもそも自分の球がもう少しきていれば。フォークももっと球速があるフォークだったら……。今日もちょっと球速が遅かったので。球速があるフォークだったら変化の“ヤマ”も出ていないですし。結局うなずいているのは自分なので。そういう(球速が出ている)つもりで投げて、球がいっていない」
そして、続けるように言った。
「そういうつもりで投げて(球が)いっていないということは、もう実力不足というか。自分の中では。そう思うしかない。自分に矢印を向けていかないといけない」
昨オフから「全勝」と、“究極”の目標をメディアの前でも口にするほど、自分が投手陣の中心にならないといけないと背負ってきた。この日も「栗原には『背負いすぎてやばいぞ』って言われましたけど、今年はそういうつもりで野球をやるというところでスタートしている」と語った。現状から逃げるつもりは一切ない。野球である以上、勝ちか負けの結果は出てしまうが、そこに至るまでの準備で、最善を尽くさないはずがない。だからこそ出口だけを探して、石川なりに悩んでいる。
「求められたものをやろうと必死なので。しんどいですけど、頑張るしかないかなというところです」。プロ野球選手である以上、自分自身を表現、証明するのは結果しかない。石川なりに貫こうとしているプロ野球選手としての姿勢が、いつか報われると今は信じたい。