新名称はファンからの1545件もの公募から決まる
ソフトバンクの本拠地PayPayドームがピンク一色に染まった。5月20日と21日の西武戦。この2試合は「ピンクフルデー」として開催された。来場者全員に配られたピンクフルユニホームを身に纏った多くのファンによって非日常の雰囲気が醸成され、2日間ともにスタンドは満員のファンで埋め尽くされた。
昨季までは女性向けの「タカガール・デー」として開催されて人気イベントが、今季から「ピンクフルデー」に名称が変更となった。「鷹の祭典」と並ぶ人気となったイベントが、なぜ名称変更となったのだろうか。
球団担当者はこう明かす。
「それまで女性限定で配布していたユニホームを、2020年には性別関係なく来場者全員に配るようになりました。鷹の祭典と並ぶ一大イベントになり、女性だけでなく、誰もが楽しめるイベントになってきた。その中で『タカガール・デー』という名称が相応しいのか、という意見が球団内で挙がったのがキッカケでした」
このイベントの始まりは2006年まで、さかのぼる。野球と最も縁遠いとされていた“女子高生”を狙った「女子高生デー」としてイベントがスタート。来場した女性全員にピンクをテーマカラーとした限定ユニホームをプレゼントするようにしたのが始まりだった。2014年には、女子高生に限らず、幅広い女性層を対象に名称を「タカガール・デー」に変えた。
2020年にはユニホーム配布を女性限定から来場者全員に切り替えた。女性だけでなく、男性もピンクのユニホームを着用し、いつもとは違うPayPayドームの空気を楽しむようになっていた。老若男女を問わない人気イベントとなったことで、球団内で意見が出るようになった。「特定の層に配慮したわけではなく、誰でも楽しめるイベント」として名称変更に踏み切った。
「ピンク」にこだわった理由
「ピンクフルデー」という名称はファンからの公募によって決まった。球団内で名称を検討する中で、ファンからもアイデアを募ることになり、実に1545件もの名称案が寄せられた。様々な案がある中で、数多く寄せられたのが、新名称になった「ピンクフルデー」だった。
テーマカラーの「ピンク」にこだわったのには理由がある。イベントのきっかけとなった「女子高生デー」の発足時に、当時アンバサダーを務めた女子高生たちが提案してくれたのがピンクでイベントの“中心”だった。
そして、もう1つ。今ではイベントの重要な社会的意義となっている「ピンクリボン運動」の取り組みがある。かつて2軍監督やコーチを務めた鳥越裕介氏が妻を乳がんで亡くしたことから、球団に掛け合い、乳がんの撲滅と検診による早期発見を啓蒙するこの運動に取り組むようになった。
選手が「ピンクリボンユニホーム」を着用して試合に臨み、審判のユニホームやベース、ネクストバッターズサークルなどもピンクリボンの装飾が施される。1人でも多くの人にピンクリボン運動を知ってもらうために活動を続け、現在は鳥越氏から中村晃外野手に活動が引き継がれている。
「ピンクリボン運動」の活動の大切さ、そして「イベントが変わるわけではなく、より誰でも楽しめるイベントにしようという球団の思い」から、テーマカラーのピンクを変えることなく、名称を変更してイベントは生まれ変わった。「非日常の体験を提供する、というコンセプトは変わっていません」。社会的意義も大きい「ピンクフルデー」は盛況のまま幕を閉じた。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)