骨折完治せぬまま実戦復帰 「あと2か月しかない」川村友斗が抱く危機感と覚悟

ソフトバンク・川村友斗【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・川村友斗【写真:藤浦一都】

支配下登録期限の7月末まであと2か月「今年が本当に勝負だと思っている」

 限られた時間でアピールするための覚悟だった。育成2年目の川村友斗外野手が18日、本拠地PayPayドームで行われたウエスタン・リーグのオリックス戦で復帰した。4月23日の同リーグ・広島戦(由宇)で左肘を骨折。わずか1か月足らずで実戦出場にこぎつけ「今年が本当に勝負だと思っているので。あと2か月しかない」と胸中を明かした。

 チャンスを得たオープン戦で打率.357、1本塁打を記録してインパクトを残したものの、支配下昇格とはならなかった。気持ちを新たにシーズン途中での支配下昇格を目指していた川村にアクシデントが襲った。左肘に死球を受け、骨にヒビが入った。リハビリ組合流当初は痛々しいギプス姿だったが、「大したことないです」と周囲の心配をよそに可能な限り練習を続けた。「痛くないです……って言っています」と自らに言い聞かせるようにしてきた。

 多少の無理をしてでも、川村がプレーするには理由がある。育成選手にとっては7月末に迫る支配下登録期限までが勝負。そこまでに昇格の切符をつかみ取るには、1日たりとも無駄にしたくない。「リハビリに行って、1か月も離脱ってなったら、チャンスも減ってくると思う。トレーナーさんにも無理を言って、なんとか早めていきます、と。リハビリのトレーナーさん達の協力もあって、なんとか早く復帰できました」。だからこそ、一刻も早い復帰を目指した。

「骨がくっつくまで待たなくても、自分がいけると思ったら言ってこい」。負傷直後、小久保裕紀2軍監督にこう言葉をかけられていた。まだ完治していない状況ではありながら、指揮官のもとを訪れて復帰を直訴した。チームドクターには「本来だったら、もうちょっと休んでほしい」と言われたが、川村は「行けます」と振り切った。この意気を買った指揮官も「絶対使ってやる」と、この日の2軍戦から川村を戦列に復帰させた。

「せっかく今年のオープン戦で結構名前を覚えてもらった。来年だったら(支配下昇格は)もっと難しくなる。今年しかない」。ルーキーイヤーの昨季は「優しすぎるところがある」と小久保2軍監督から指摘されていた。しかし、今の川村は明らかに強くなった。井出竜也2軍外野守備走塁コーチも「オープン戦を経験して川村は変わった」と変化を感じている。“今年がラストチャンス”くらいの覚悟を、川村は持って戦っている。

 川村自身、どんな意識の変化が生まれたのか。「去年、小久保監督とかコーチの方々は、1軍の選手はもっとやっているぞと話をされていました。オープン戦に帯同して、本当にめちゃくちゃやっているんだなって分かりました。それ以上にやらなきゃいけないなと思ったし、ここでやりたいなという思いが強くなりました」。目の色が変わった。

「アーリーワークに出ていたんですけど、栗原さんが毎日参加していたり、途中から柳田さんがロングティーをしていたり。1軍って各自でアップをするんですけど、その時も中村晃さんとか、今宮さんがめちゃくちゃ早く来ていた。レギュラーを獲る人ってこんな感じなんだなっていうのが分かりました」

 オープン戦で本塁打を放つなど、持ち味のパンチ力は自信にはなったはずだが「もう前のことなので」と過去を振り返るつもりはない。「1軍でも守備と走塁はついていけるなと思ったんですけど、バッティングは全然結果が出てないのでまだまだです」。目の当たりにした1軍選手からの刺激を糧に、限られた期間で支配下登録をつかみに行く。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)