自分を追い込んでしまうと「意味のわからない反省の仕方になってくる」
自分へのふがいなさも、心のコントロールが難しいことも、経験してきたから痛いほど分かる。石川柊太投手だからこそ伝えたいメッセージだった。17日の盛岡での楽天戦に0-3で敗れたソフトバンク。大関友久投手は8回3失点、112球と力投したものの、打線の援護なく4敗目を喫した。防御率1.84はリーグ6位の好成績も、援護率1.24はリーグワーストだ。
援護率とは投手がどれだけ打線の援護を受けたかを表す。今季は初めて開幕投手を託され、その後もカード頭で登板してきた。相手がエース級をぶつけてくることも無関係ではないが、7試合で早くも4敗目となった。そんな姿を見守り、時に声をかけているというのが2021年に開幕投手を務めた石川だ。同年は6勝9敗に終わった右腕は、今の大関に何を思うのか。
「(大関とも)いろんな話をするので。チーム的に勝ったり負けたりとか、その中で自分ができることだったりを見失わずにやった方がいい。抑えなきゃ……とか、あのホームランで負けた……とか、思いが強ければ強いほどダメージも強くなる。甲子園みたいな感じじゃないですか。一発勝負で『この試合にかけている』って試合で負けたら悔しい」
「厳しい世界なので。『勝っていないけど、いいピッチングしているじゃん』って、思ってほしいとは思わないです。自分の中でもっとシンプルに『いい投球をするんだ』って頑張れればいい。深く考えすぎると、7回1失点1ホームランで、その1点を悔やむし『あの1球が低かったら……』っていう、意味のわからない反省の仕方になってくるので」
投手と野手は、持ちつ持たれつの関係だ。7回1失点で敗れる時もあれば、大量得点に守られてスイスイと投げられる時もある。反省することは大切だが、原因を探しすぎてしまうことは、自分を苦しめることになる。石川も「いまだに手探りです」という心のバランス。「(チームメートで)励ましながらやっていかないと」と、先輩としても大関を絶対に“孤独”にはさせまい、と誓う。
斉藤和巳投手コーチは、大関の登板日がロースコアになることを「開幕投手の宿命」と表現していた。相手のエース級との投げ合いに勝っていくことで、自分の成長につなげないといけない。石川も自身の経験を踏まえて「淡々と頑張るだけです。ロースコアだからとかじゃなく、ただひたすら丁寧に気持ちを込めて投げるだけです」と話す。試合において様々な要素はあれ、考え方はシンプルでいい。
石川は2022年、規定投球回未到達ながらも援護率2.86だった。昨季の規定投球回に到達した9投手と比べても、石川はリーグワースト3位となる。自身も経験した道だから大関の気持ちはわかる。17日の楽天戦で3本許したソロ。受け止めるのは“それだけでいい”と石川は言う。
「それはもう自分の中だけの話なので。大関が自分のピッチングを、どう思うか。ホームランを反省するだけでいい。あのホームランがなかったら…とかじゃなくて、最善を尽くしてホームランなので。当たり前ですけど、あれをもう少し低くしておけば……とか、そんな覚悟でやっていないです。だから、シンプルでいいんです」
最後に石川に聞いてみた。今、大関に言葉をかけるなら、どんな言葉をかけるのか。「お前はいいピッチャーだ、ですね。一言でいいと思います。重く考えずに、シンプルに。『自分はいいピッチャー。そのままでいい』って。それくらい今のあいつの状態もいいと思うので。本人にも言いますけどね」。大関に届いてほしい、心からの言葉だ。
(竹村岳 / Gaku Takemura)