松本裕樹の姿に感じる確かな変化 滲む自信と確信「わざわざ慌てる必要はない」

ソフトバンク・松本裕樹【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・松本裕樹【写真:藤浦一都】

昨季終盤は勝ちパターンの一角として活躍「ある程度投げられそうだなっていうところがある」

 自信に満ちた表情で淡々と調整を行っている。宮崎春季キャンプの第2クールを迎えたソフトバンクの中で、これまでとは異なる表情に映る選手がいる。2014年のドラフト1位で入団し、今季が9年目となる松本裕樹投手だ。昨季44試合に登板し、勝ちパターンも任された右腕が焦ることなく、シーズンに向かっている。

 第2クールの初日となった7日、松本はブルペンで昨季の登板数と偶然にも同じ44球を投げ込んだ。変化球も交えてボールを投げ「だいぶ体も動いてきて、徐々に良くなってきたかなと思います。だいぶ指にかかって、狙ったところにいく球が増えてきているかなというふうには思います」と語り、順調に調整が進んでいるようだ。

 松本にとってはこれまでとは異なる春季キャンプを迎えている。近年は先発ローテを争う候補としてキャンプでは競争の中にあった。フリー打撃での打撃投手、シート打撃登板、紅白戦、そして対外試合とアピールのために状態を上げていかねばならなかった。ただ、今年は第1クールで行われた投手陣の打撃投手登板に、松本の名前はなかった。

 昨季終盤、勝利の方程式の一角を託され、リリーフ陣に不可欠な存在となった。藤本博史監督はその安定感を高く評価し、早い段階で今季もリリーフとして起用する方針を決めた。立ち位置が固まり、今年の春のキャンプは競争からは頭一つ抜けた存在に。これまでのヨーイドンからのアピールよりも、シーズンを見据えた調整を進められるようになった。

「慌ててどこかに合わせてやるというよりは、シーズンを見据えて今はやれているかなという状況ですね。自分の中である程度投げられそうだなっていうところがあるんで、わざわざ慌てる必要はないというところも自分の中では大きいと思います」。そう語る姿からは、ドンッとした落ち着きがしっかりと感じられた。

 今季は9回にオスナ、8回にはモイネロが入ることが確実。昨年、8回を担った藤井皓哉投手は先発に転向するものの、又吉克樹投手や甲斐野央投手、津森宥紀投手、泉圭輔投手ら勝ちパターン入りを狙う候補は多い。松本自身も「理想でいえば勝ってるところでしっかり投げたいなというところはある」と方程式への思いを見せつつも「どのポジションであってもチームには必要な存在だと思う。みんなで切磋琢磨して1年間戦って優勝できるような戦力を高めていければいいかなと思っています」と語る。

「1年間ずっと投げ続けて、まずは50試合っていうところを目標に持ってやっていきたい」と2023年の目標を掲げる。冷静に、淡々と……。昨年の“7回の男”は、焦ることなく開幕を見据えて状態を上げていく。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)