逆転3ランを浴びたロッテ戦後「嘉弥真さんと拓也さんに無理矢理にでも飯行くぞ」
7日に契約更改交渉を行い、現状維持の年俸2700万円でサインしたソフトバンクの泉圭輔投手。交渉後に行われた会見では「自分のせいで負けちゃってバッシングというか、嫌でも誹謗中傷が目に入ってきた。あの試合から1週間くらい、家から出るのも怖かった」と、リーグ最終戦後にインターネット上で飛び交った誹謗中傷への恐怖を告白した。
今季30試合に登板して0勝2敗6ホールド、防御率3.72。勝つか引き分けでリーグ優勝が決まる10月2日のロッテ戦では2点リードの6回に2番手で登板したものの、山口に逆転3ランを浴びた。ベンチで人目をはばからず号泣した右腕。チームはそのまま3-5で敗戦し、勝ったオリックスに逆転でのリーグ優勝を許すことになった。
試合直後からSNS上では泉への誹謗中傷が飛び交った。泉自身もこれを見て恐怖を感じたという。「いつ誰に何されるか分からないなと思った。どうしてもやっぱり1人になって、いざ家に帰って外に出るとなると、本当に九州のファンの方、全員を敵に回しちゃった気持ちになったので、めちゃめちゃ怖かった」という。
そんな右腕を支えたのが、励ましのエールを送った温かいファンと、そしてチームメートだった。ロッテ戦の試合後、嘉弥真新也投手と甲斐拓也捕手に食事に誘われた。「その日、嘉弥真さんと拓也さんに『無理矢理にでもメシ行くぞ』って言われて」。外出にも恐怖を覚えていたが、嘉弥真は同じホテルの泉の部屋まで迎えに来てくれた。焼肉店へと移動する道中、甲斐は泉の手を握っていてくれた。
優勝を逃したのは、決して泉の責任ではない。嘉弥真と甲斐を代表するチームメートたちは当然、それを分かっていた。だからこそ、2人は涙に暮れた泉を食事に連れ出し、励ましの言葉をかけたのだった。
「いろいろ慰めていただいたり、励ましていただいたりした。チームメートの方々にもいろいろ支えてもらった。1週間ぐらいして、そこばかり振り返ってても意味がないなと思った。ファンの方々からも言葉をいただき、立ち直るキッカケになった」
今でもあの夜の記憶は鮮明に残っている。「前の日にほぼほぼ投手を使っていて、どう考えても、あのイニングに行く人は限られるな、と。ああいう場面で投げられること自体が光栄ですし、結果で応えられるようにと思ってマウンドに行った」と振り返るロッテ戦のマウンド。異様な空気も感じた。3ランを浴びた直後は「これまでと次元が違うぐらい本当に真っ白になった」という。
当然「思い出したくはない場面」という。それでも、泉は秋季キャンプ前にこの映像を見返した。「こういう経験をまたしないように頑張ろうと」。自身を奮い立たせるため、そして、再スタートの一歩を踏み出すため。「あの経験から成長した自分を見せないといけない」と、励ましてくれたファンにも恩返しをしたい。
もし、あのロッテ戦の場面が訪れたら……。そんな報道陣からの問いかけに泉は即答した。「そこに上がれるチャンスがあるなら、10月2日の結果とかは全く関係なく、選手だったら上がりたいと思う。そこで結果を残してこそ一人前なのかなと思うので、また機会があれば投げたいなと思います」。次こそはあの場面で抑えられる投手に。恐怖と後悔を糧に、泉はもっともっと成長してみせる。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)