32歳の“チーム最年少コーチ” 引退した高田知季が歩み始めた指導者の道

ソフトバンク・高田知季リハビリ担当コーチ【写真:上杉あずさ】
ソフトバンク・高田知季リハビリ担当コーチ【写真:上杉あずさ】

「怪我したことは仕方ないんですけど、その時間が有意義だったなと思えるように」

 今季限りで現役を引退し、コーチとして新たな一歩を踏み出した高田知季リハビリ担当コーチ。32歳という“チーム最年少コーチ”は、気持ちを新たに、再びホークスのユニホームに袖を通し、筑後のファーム施設で行われている秋季キャンプの現場に立っている。

 3日にスタートした筑後キャンプ。リハビリ組を任されることになった高田コーチは、故障を抱え、復帰を目指す選手たちをサポートしている。第1クールを終え「なんか、僕も違和感ありますけど、選手もあると思います(笑)。ソワソワしますね。今まで身体を動かさないといけなかったものを、動かさなくていいと言うか、じっとしているのがソワソワします」と口にする。それもそのはず。球団から来季の契約を結ばないと通達され、現役を退くと決めてからまだ1か月も経っていない。

 ソワソワしながらも、責任感の強い高田コーチは早速、“選手ファースト”で自身がどんな役割を担うべきなのかを考え、グラウンドに立っている。「今までは自分中心でいろいろ考えてやれば良かったんですが、今度は選手ファースト。今いるリハビリの選手の状況や状態を把握しながら、目配り気配りもそうですけど、そういうのが大変だなと思いますね」と語る。

 もともと気遣いの人物だ。冷静に周りを見て、声を掛けたり行動ができたりする性格は、コーチ向きだと感じる。「管轄的にはリハビリなので、今動ける選手が少ない。量をやって教えるっていうのがないので、限られた動きの中でワンポイントアドバイスとかですね。若い選手がいると、より僕も経験談だったり、指導っていう部分ではやりやすいので。イメージ通りでもあり、イメージと違うところもあったりする」。始動してまだ数日ではあるが、自分なりのコーチ像を模索しながら選手たちと向き合っている。

 自身も怪我に苦しむ野球人生だった。「僕は相当、焦りというか、前倒しでやりたいと思って、多少痛くてもやっていたタイプでした。今はオフに入っているので『焦らなくていいよ』という話はしています。(来年)2月に間に合うように、間に合う選手はそこを目指して調整したらいい。状態を確認、相談しながらですかね」と自身の経験も踏まえつつ、リハビリ組の選手たちを思いやりながらコーチ業に就く。

「リハビリ担当というコーチになって、一番は1日でも早く選手が良くなることを望むんですけど。その中で選手が実戦復帰した時に、このリハビリの期間で準備できたと思ってくれるように、怪我したことは仕方ないんですけど、その時間が有意義だったなと思えるようにしたいなと思っています」と高田コーチは語る。誰よりも現役に近い新米コーチは、自身の経験を踏まえながら選手たちに寄り添っていく。

(上杉あずさ / Azusa Uesugi)