松田宣浩から登録抹消となる際に想いを伝えられていた今宮ら
■ソフトバンク 5ー4 楽天(29日・楽天生命パーク)
29日に楽天生命パークで行われた楽天戦に競り勝ち、マジックを「2」とし、リーグ優勝に王手をかけたソフトバンク。藤本博史監督が「絶対に落としたくなかった」という一戦で勝利をもたらしたのは“熱男魂”を受け継ぐ、選手会長の今宮健太内野手だった。
初回、アルフレド・デスパイネ外野手と牧原大成内野手の連続タイムリーで2点を先制すると、今宮も楽天先発の瀧中から右前へと弾き返す技ありの適時打を放った。今季ここまで7打数0安打と打っていなかった右腕から「絶対1本打ちたい」と思いを込めた一打だった。
さらに同点に追いつかれて迎えた5回2死一、三塁では、安楽の初球に詰まりながら、右前へ落とす執念の勝ち越し適時打。リリーフ陣がこの1点のリードを最後まで守り抜いき、この一打が決勝打となった。今季、選手会長としてキャプテンの柳田悠岐外野手とチームを引っ張ってきた男は「追いつかれて、嫌な流れの中であそこで1本打ててよかった」と安堵の笑顔を浮かべた。
尊敬してやまない大先輩の思いがある。28日に松田宣浩内野手が今季での退団を表明。球団から来季の構想から外れていることを告げられた松田はその翌日、出場選手登録抹消となることが決まると、今宮、柳田、中村晃外野手の3人に対してだけ、そのことを伝え「今度はお前らが引っ張っていく番だから」と思いを継承した。
「人として、プロ野球選手としてめちゃくちゃリスペクトしています」
その日からだった。今宮はタイムリーや本塁打を打った際に球団を通じて出すコメントに「熱男魂」と入れるようになった。この日の試合後も今宮は「松田さんのいいところっていうのはやっぱり僕らが受け継いで、これからどんどんホークスの伝統としてやっていかなければいけないことだと思いますし、松田さんに残してもらったものは、数えきれないぐらいあるので」と胸中を明かした。
さらに、今宮はこうも語る。「143試合っていう試合数がある中で、本当にいつも元気で、打てなくても自分のことだけに集中するんじゃなく、周りに気を配って声を出すとか、そういった姿はなかなかできそうでできない。こういう人に育っていきたいなって感じるところもあります。僕たちがあれだけ声を出して引っ張っていけるかっていったら正直、無理なところはあるんですけど、人として、プロ野球選手としてめちゃくちゃリスペクトしています」。この日の2本のタイムリーも、そんな偉大な先輩への思いが込められていた。
この日の勝利で優勝へのマジックは「2」となり、30日の結果次第では2年ぶりのリーグ優勝が決まる。松田と共に、長らくチームを支えた明石健志内野手も今季での引退を決めた。今宮は「2人を優勝していい形で送り出すことができればベスト。何とか2人のためにも、ファンの皆さんのためにも優勝できるように頑張ります。何とか“熱男魂”で優勝したいです」と語る。悲願のリーグ優勝は目前。松田の思いに応えるためにも、このまま一気にゴールテープを切りに行く。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)