「呼んでもらっても行けるなという準備は出来てきたかなと思います」
ソフトバンクの大関友久投手が13日、タマスタ筑後で行われたウエスタン・リーグの広島戦2番手として登板すると、1回無安打無失点と好投した。精巣がんの手術を受けてリハビリ中の左腕はまた一歩、1軍復帰へ向けて歩みを進めた。
8月2日に精巣がんの疑いで手術を受けた大関は、自宅療養、リハビリ組での練習を経て、10日の3軍戦で実戦復帰を果たしたばかりだった。手術からわずか1か月ほどでマウンドに戻ってくるというスピード復帰だったが、そこから中2日、今度は術後初めて2軍戦のマウンドに上がった。先頭打者を投ゴロに打ち取ると、左飛、遊ゴロで3者凡退。最速148キロをマークした。
この日の登板後、大関は「だいぶ戻ってきました。順調に上がって来られています」と笑みを浮かべた。1イニングずつとはいえ、復帰戦から中2日での登板だったが、体調面も全く問題はなかったという。小久保裕紀2軍監督も「全然急がせてないんですけど、本人があの性格ですし、非常に体調も良さそうで。体組成的にもかなり戻ってはきてるんですよ。ボールを見る限りは、もう全然戻ってるなっていう感じですね」と回復ぶりに驚きを隠せない様子だった。
今季は中継ぎでの1軍復帰を目指し、調整を進めている。「とりあえず今は出力を戻す、強いボールを戻すというイメージでやっています」と大関。この日は球場のガンで148キロ、球団所有のガンでは149キロが出ていたという。「いい感じで投げられているので、それ相応のスピードも出てくれている。感覚と数字(球速)が一致しているので、安心しました。もうちょっとかな」と手応えありだ。
これほどのスピード復帰に周囲は驚きを隠せないが、当の本人は「狙い通り」だと笑う。1週間の入院期間は、考えごとをする時間が多くあったため、あらゆるシチュエーションを想定していた。来季に照準を合わせるパターン、思ったより早く復帰できるパターン。身体の状態がどちらであっても対応できるように、自分なりに復帰計画を立てていた。早期復帰が目指せる方向へ進むことが出来た。
自宅療養中は、散歩をしたり、軽めにジョギングをしたり、ダンベルなどの器具を購入して部屋で出来る範囲のウエートトレーニングも行った。食事面にも気を遣いながら過ごしていた。いきなり今までと同じような生活は出来ないにしろ「筋量もそんなに落ちずに済んで、狙い通りというか。いい感じでリハビリ初日を迎えられました」。リハビリ組に合流した段階で、すぐにキャッチボールが出来る状態を作れていたことが、順調な復帰に繋がった。
「今年は1軍は諦めて来年というプランもちゃんとありましたし、動き次第では今年に間に合わせるというのも頭に入れてやっていたので。思ったより早く動き出せたというところで、やっぱり試合で投げてナンボだと思うので、狙えるなら狙いたい」と大関。既に1軍で戦力になるべく、視線を向けている。
チームは熾烈な優勝争いが続く。無理をさせないことは大前提の上だが、首脳陣も貴重な左腕の復帰を望んでいるはず。大関は「もう1個、タイミングだったり、微妙な力強さが戻りそうですけど、準備は出来てきているなと。呼んでもらっても行けるなという準備は出来てきたかなと思います。自分はまだまだ上げていくことに集中して、呼ばれるのを待つ。戻して、さらにパワーアップして」と準備を進めている。
小久保2軍監督も結果が伴い、体調も問題なければ、早い段階での1軍復帰もあることを示唆している。大関の復活は、戦力としてのみならず、多くの人に勇気を与えてくれるはずだ。
(上杉あずさ / Azusa Uesugi)