3ボールから打ちに行くか「正直迷っていた」という今宮
ソフトバンクは12日、本拠地・PayPayドームで西武と戦い、7-5で競り勝った。1点ビハインドの3回に今宮の2点適時打で逆転すると、デスパイネも10号2ランを放ち、この回一挙4得点。さらに4回に正木が3号ソロと中盤までに5点を奪った。先発の東浜は6回途中3失点で2017年以来の2桁勝利となる10勝目。終盤、西武の反撃をリリーフ陣がなんとか凌いで逃げ切った。
勝利への道筋をつけたのは選手会長のバットだった。1点を追う3回、先頭の甲斐が四球を選ぶと、続く周東も2者連続四球で無死一、二塁に。三森が犠打で走者をそれぞれ進めると、今宮に打席が回ってきた。3球ボールが続き3ボール0ストライク。このカウントから今宮は思い切って打ちに行った。
ストライクを取りに来た甘いストレート。捉えた打球は中前で弾み、2人の走者が生還した。逆転の適時二塁打。2回に先発の東浜が先制を許し、早く追いつきたいところで飛び出した、試合をひっくり返す一打。好投手エンスを攻略する大きなキッカケとなった。
この場面、カウントは3ボールだった。1球待つか、積極的に打ちに行くか。ストライクを取りにくるところを狙えば、ヒットになる確率は高まる。ただ、仮に打ち損じた場合は流れが悪くなる。打者としては迷いどころになる。今宮自身も「正直迷っていたんですけど」と、その時の心中を明かす。
背中を押したベンチの空気と“1点OK”の西武の守備体形
藤本博史監督が「今年に限ってはノースリーからチャンスの時は待てのサインは出さないんで」と明かしたように、エンスが制球に苦しんでいても、ベンチから“待て”のサインはなし。むしろ、今宮は、積極的に打ちに行ってもらいたいというベンチの空気を感じとった。「ベンチを見たら『行け行け』みたいな感じになっていた」。腹を括り、覚悟を決め、ストライクを取りにくるところに狙いを定めた。
状況も今宮の背中を押した。1死二、三塁で西武の内野守備は定位置。“1点やむなし”の守備体形を敷いていた。「最悪内野ゴロになっても、1点というところがあった。仮にショートゴロになってしまっても1点は入るっていうところはちょっとプラスとして考えられたので。そこもちょっと考えながら、思い切っていった結果が良かったかなと思います」。バットに当てて転がしさえすれば、少なくとも同点になり、試合を振り出しに戻せる。そう考えれば勇気も出た。
結果、打球は中前へと抜けて試合をひっくり返す一打になった。さらに2死からデスパイネが左翼スタンドへ10号2ラン。今宮も3点目のホームを踏んだ。その後は点の取り合いとなったが、なんとか競り勝ったソフトバンク。この3回、スリーボールから打った今宮の適時打がチームに勢いをもたらし、勝利を呼び込んだのだった。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)