同点で迎えた9回に今季2本目となるサヨナラ弾を放った周東
ソフトバンクは13日、本拠地PayPayドームでオリックスと対戦し、劇的なサヨナラ勝ちを収めた。同点で迎えた9回に周東佑京内野手がサヨナラ弾。今季2度目のサヨナラ本塁打に加えて、先制点の起点になり、守備でもチームを救う好プレーを見せた、逞しさを増したスピードスターがヒーローとなった。
劇的な一発で不穏なムードを吹き飛ばした。3点リードの8回にセットアッパーの藤井皓哉投手が3点を奪われて追いつかれた。土壇場で追いつかれ、本拠地には嫌なムードが漂っていた。9回1死。オリックス5番手の宇田川が投じた初球を捉えた打球は右翼ホームランテラス席へと飛び込んでいった。
「打った瞬間はフェンスじゃなくて、外野の頭を越えてくれ、と思ってました。角度がそんなに出ていなかったので、多分入らないだろうなと。入ってビックリしました」。本人も驚く今季2度目のサヨナラ弾。ダイヤモンドを一周すると、歓喜に沸くチームメート達の輪に飛び込んでいった。
7試合連続得点中で日増しに高まる存在感
藤本博史監督は試合後に「今日は周東デー」と手放しで称賛した。それもそのはず。周東は初回、遊撃への内野安打で出塁、すかさず盗塁を決めて先制点の足がかりを作った。2回には2死満塁で頭上を襲う大飛球を好捕し、先発の武田翔太投手とチームを救う大ファインプレー。さらにその裏には右中間への三塁打を放ち、9回にはサヨナラ本塁打と攻守で躍動した。
鷹のリードオフマンとして、日増しに存在感を増している。これで6試合連続で安打を放ち、7試合連続得点を記録。3試合連続で初回に出塁してホームを踏んでいる。8月の月間打率は3割を超え、既に8盗塁もマーク。指揮官も「(存在は)大きいですよね。1番にハマって、出たらバントする前に走ってくれる。今野状態を最後まで続けてくれれれば」と目を細める。13試合連続盗塁を決めてチームを優勝に導いた2020年の終盤戦を思い起こされる活躍だ。
プロ通算5本塁打だった周東が今季52試合目の出場でシーズン5本塁打に到達した。長打率も4割を超え、パンチ力も備えつつある。スピードスターの進化。「いつもシーズン中にキツくなってきたら、トレーニングをやめてしまったりっていうのがあったんですけど、今年はしっかりトレーニングも継続しながらできている。体がいい状態でしっかり打席にも立てているのかな、と思います」。リハビリ中に取り組んできたトレーニングをシーズン中も行えるようになった。肉体的にタフになってきた証だ。
これまで食欲が落ちて体重を減らしてきたが、今季は「落ちてない」
例年、夏場になると食欲が落ちて体重が激減する。2020年は終盤戦だけで4、5キロ減ったが、今季は「落ちてないんですよ」という。食欲が落ちることもなく「しっかり今年は食べられているんです」。夫人がしっかりと食事を用意してくれているようで「どんどんいろんな食べ物を出してくれるんで、助かってます」と感謝も忘れない。
「自分がどう帰すかじゃなくて、自分がどう帰るかっていうところが1番としては大事なところ。打点を稼げるバッターが後ろを打ってくれているので、どうやって塁に出るか、どうやって前の塁を狙っていくかっていうのは一番考えてるところ。現状この1週間ぐらいはしっかりそこができているのかなと思います」。リードオフマンとして担うべき役割を理解し、それを見事に遂行している。
出塁さえすれば、高い確率で二塁への盗塁を成功させ、本塁へと生還する周東の働き。SNS上では「#周東は一塁でも得点圏」のフレーズが話題になっており、周東自身も「知っています」と笑う。「そういうのができ上がってくれれば、より相手も警戒してくれると思うので、どんどんメディアの方々に取り上げて欲しいです」と、更なる“拡散”を望む。
これまでよりも力強さも、逞しさも増して進化を遂げたスピードスター。三森大貴内野手が離脱して以降、なかなか固まらなかったリードオフマンの座を確たるものにしている。2年ぶりのリーグ優勝に向けて勝負の終盤戦。「1番・周東」の働きが鍵を握るかもしれない。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)