前田悠伍がチェンジアップを封印 「投げる意味がない」と語る理由…明かした手応えと見据える1軍

2軍で先発した前田悠伍【写真:飯田航平】
2軍で先発した前田悠伍【写真:飯田航平】

前田悠伍が掴んだ1軍で勝つための手応え

 相棒を“あえて使わない”投球を披露した。29日、ファーム・リーグのオリックス戦(タマスタ筑後)。先発した前田悠伍投手は4回0/3を投げ、被安打4、5奪三振1失点。特に右打者の内角に投げ込む直球と、緩急を生かしたカーブのコンビネーションが要所で光った。しかし、58球の全投球の中に、代名詞である「チェンジアップ」は、たったの1球たりともなかった。

 昨シーズン、高卒2年目ながら2軍で46回2/3連続無失点というファーム記録を打ち立てた。そんな左腕にとって、この場所はもはや抑え方を知り尽くした場所ではある。とはいえ、1軍の開幕ローテーションを逃した前田悠。今、背番号41が求めているものは何か――。

「真っすぐで右打者にも左打者にも内角を突けていて、チェンジを投げたら絶対に抑えられることはもうわかっているので。チェンジアップで抑えるのは、もういいんです」

 淡々としつつも、確信に満ちた口調で前田悠は語った。登板前に小笠原孝2軍投手コーチ(チーフ)から、この日のテーマを尋ねられた際は、右打者への内角の直球をメーンに、変化球はカーブを主体にすると伝えた。その理由をこう明かす。

「もちろん真っすぐもそうですけど、カーブとフォークの精度が大事だと思うんです。その2球種でストライクが入らないと、真っすぐかチェンジアップのどちらかに絞られるし、張られるので。だからきょうは投げませんでした」

 1軍の強打者たちをねじ伏せるためには、チェンジアップという「盾」に守られるのではなく、カーブやフォークといった「矛」を磨き直さなければならない。そのために、アマチュア時代から野球人生をともにしてきた“相棒”をあえて封印した。プロ入り後では初めての“試み”。「投げない」という選択が、結果的に左腕にとって1軍で勝つための新たな可能性をもたらした。

コーチが突きつける「1軍で勝負できるボール」

 ベンチで見守った小笠原コーチの言葉も、期待の高さゆえに厳しさを増す。開幕ローテーションに加われなかったことは「現状の力。1軍で勝負できるボールじゃない」。体調不良による一時離脱があったものの、その影響ではなかったと断言する。だが、この日の評価は違った。

「きょうは何球か勝負できるボールが増えた。(相手打者に対して)クロスに入っていく球を課題にしていて、それが何球もあったので。それが投げ切れないと、他の球種も生きてこないし、彼は(1軍では)絶対に通用しない」

笑顔でベンチに引き上げる前田悠(右)と渡邉陸【写真:飯田航平】
笑顔でベンチに引き上げる前田悠(右)と渡邉陸【写真:飯田航平】

感じた地面からの反発…最速148キロに宿った手応え

 1軍で勝負するためのテーマ設定は、副産物ももたらした。フォークやカーブを精度よく投げ込むためには、体の使い方が横振りになってはいけない。縦に使うイメージが重要になる。試合前のキャッチボールで「あ、いいかも」と直感したフォームは、投げ終わりに自らの力が地面から跳ね返ってくるような感覚だったという。

 この日の最速は148キロ。「感覚的には今まででも結構上位に入るくらい良かったです。力が前に伝わっている感じはすごくありました」と手応えも口にする。

「2軍で去年も一昨年も投げていて、早く1軍に上がりたいという気持ちが一番強いので。今すぐにでもいきたいです」。武器を隠しながらも好投した左腕が、またひとつ階段を登った。「いつ呼ばれてもいいように」。そう言い残し、誰もいなくなった室内練習場へと向かった。

(飯田航平 / Kohei Iida)