WBCの特例措置も終了に
将来のチームを背負う育成選手に焦点を当てた新コーナー「未来の推し鷹」。第3回は、ホークスで3年目のシーズンを迎える佐倉俠史朗内野手が登場です。記者が目にしたのは、中村晃外野手との身振り手振りを交えた“野球談義”。2軍での出場が増えてきた中で、新たに直面した課題。その壁を乗り越えるために、ベテランに尋ねたことがありました。
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同じ高卒からのし上がった好打者と自身の感覚を照らし合わせた。18日のタマスタ筑後、試合開始前に雨が降っていたこともあり、2軍は室内練習場で調整を行っていた。そこでは、腰の手術から復帰を目指す中村晃の懐に飛び込んでいく佐倉の姿があった。
今季のファーム公式戦では、WBC開催に伴い「育成選手出場枠」の一時撤廃措置が施されていた。この期間に斉藤和巳2軍監督は多くの育成選手を起用。だが、特例も終わりを迎え、再び「5枠」という狭き門を争う過酷な日常が戻ってくる。そんな中、高卒3年目を迎える佐倉は、中村晃に一体何を求めたのか。そして、長年ホークスを支えるベテランは、20歳の若者に何を伝えたのか。
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続きの内容は
中村晃が20歳に伝えた「速球対策の真髄」
16歳差のスターの懐に飛び込んだ若鷹の「覚悟と本音」
熾烈な「育成5枠」を掴むための“自己主張”戦略
「今、僕が課題にしていることは真っすぐの速さに差し込まれたりすることなんです。晃さんがプロに入ってきた時はどういうイメージで打っていたのかを、まず聞きに行きました。速い球に対して、僕は受けちゃうから。自分から行くのか、待ったほうがいいのかという話をしていました」
高校通算31本塁打を誇ったスラッガーも、プロの「生きた球」には簡単に対応できない。2軍での出場機会が増えたからこそ、対戦する投手のレベルも自ずと上がる。受け身になれば、一瞬で差し込まれる。その壁をどう乗り越えるかが、佐倉が直面している課題だ。
中村晃の助言…「いい感じだね」
そんな葛藤を抱えていた時、たまたま打撃練習で同じ組になったのが中村晃だった。物怖じする様子は微塵もなく、互いにバットを握りながら、打撃談議を交わす。中村晃から返ってきたのは、「自分から攻めに行くことを、しっかりやっておいたほうがいいよ」という、迷いを断ち切る言葉だった。さらに、佐倉が今取り組んでいる「初動を早く、ゆっくり振る」という練習に対しても、「いい感じだね。それは絶対にやったほうがいいよ」と、ベテランは力強く背中を押したという。
「ためらっていたら、勿体ないじゃないですか」。佐倉は当たり前のようにサラリと言い切る。16歳の年齢差があり、1軍のスター選手に声をかけるのは勇気がいるはず。それでも貪欲に近寄っていく。「1軍の選手も聞かれて嫌じゃないと思うので。リスペクトを持って聞いてるというか。自分ができないことをできる選手がいるというのは、話が聞けるチャンス、時間だと思うので」。そう語り、瞳を輝かせる。
そんな佐倉の背中には“期限”がつきまとっている。特例がなくなれば、2軍の公式戦に出られる育成選手はわずか5人。実力はもちろん、期待値がある選手がその枠の中で必死に実力を証明しなければならない。
「これからは3軍に行くこともあると思います。でも、5枠ということは、その時に『使ってみたい』と思わせる5人に入っていればいい。結果もそうですけど、練習態度とかから『こいつなら使ってもいいな』と思わせるような選手でいたいです」
誰よりも大きな声を出し、グラウンドを活気づける。その姿は、技術以外の大切なアピールポイントだ。「首脳陣の方の目にも付くと思うので」。どの軍にいても“自己主張”は怠らない。中村晃から授かった「攻めの姿勢」を胸に、3年目のシーズンを戦い抜く。今季はこれまでとは違った1年になりそうだ。
(飯田航平 / Kohei Iida)