育成ルーキーが迎えた“ほろ苦くも明るい”デビュー戦
鷹フルでは3桁の背番号を背負う育成選手に焦点を当てた新コーナー「未来の推し鷹」をスタートします! 第1回は、江崎歩内野手が登場です。福井工業大附福井高から育成ドラフト2位で入団。そんな若鷹を評価し、2軍戦で起用した首脳陣の意図と、今宮健太内野手が絶賛した理由に迫ります。
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期待感などという言葉では足りない、強烈な“予感”が漂う。背番号「144」。18歳の若鷹が早くも2軍のグラウンドに立った。7日に行われた阪神との春季教育リーグ。高卒育成ルーキーの江崎が「2番・遊撃」でスタメン出場した。上位打線で守備の要、首脳陣の意思が透けて見えるオーダーだった。
相手のマウンドには、百戦錬磨の西勇輝投手が立っていた。江崎にとっては、あまりに高すぎる「プロの壁」。結果はノーヒットに終わり、プロの厳しさを突きつけられたほろ苦いデビュー戦に見えるかもしれないが、ベンチで見守った斉藤和巳2軍監督の表情は、どこか晴れやかだった。
「楽しみでしかない」
指揮官にそう言わしめた若鷹の姿。この抜擢を裏付けるかのように、春季キャンプ中に今宮健太内野手が密かに語っていた江崎への評価があった――。
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続きの内容は
斉藤和巳2軍監督が明かした、江崎を「2番・遊撃」で起用した理由
江崎が肌で感じた、1軍レベルとの「決定的な差」とは?
名手・今宮健太が唸った、江崎の「特殊な動き」の正体
「楽しみでしかない」斉藤和巳2軍監督も感じた可能性
「担当コーチから『頭から行きたい』という相談があったので『全然いいよ』と。交代要員がそんなにいなかったというのもあるけど、最後までいくかどうかは試合の状況次第だった。『どうする?』って聞いたら『最後まで行きます』と言っていたので」
斉藤監督の言葉からは、コーチ陣が江崎の実戦での動きを“見たくてたまらない”という熱量が伝わってくるようだった。守備機会は少なかったが、フライ処理や併殺プレーを無難にこなす姿に、ベンチは確かな可能性を感じ取っていた。
打席ではベテラン右腕の西やラファエル・ドリス投手といった1軍クラスの投手と対峙した。「これまで経験をしたことのない、テレビで見るレベルの選手ばかりがいたので……。これまでとは全然違いました」と、試合後の江崎は、興奮冷めやらぬ様子でそう語った。
見逃し三振に倒れた打席もあったが、斉藤監督が「力自体がまだないというのは当たり前のこと。振っていきながら覚えていくしかない」と言うように、今はその「差」を肌で感じ、フルスイングで立ち向かった姿勢こそが最大の収穫だった。
名手が語った「一番ショートらしい」
2月のキャンプ期間中、江崎はずっと筑後のC組で砂にまみれていた。「自分自身はやっぱり守備と足が持ち味。そこを意識しようと思って、ずっと守備を意識してやっていました」。キャンプ中の宮崎行きは叶わなかったが、武器である足と守備を磨き上げてきた。まだ、あどけなさが残る18歳だが、自分の生きる道を真っすぐに見据える瞳には力強さがある。
そんな江崎を絶賛していた選手がいる。今季、プロ野球記録となる遊撃手での14年連続開幕スタメンを狙う名手の今宮だ。キャンプ中にふと、江崎への評価を口にしたことがある。
「若い子の中で、一番ショートらしいショートだなと思った」
S組として筑後で調整している期間に江崎のプレーを見ていた今宮は、そう感じた理由をこう語る。「あの動きはなかなかいないんじゃないですかね。うちの中では。“ザ・ショート”っていう動きはしてると思います。久しぶりにあんな選手見たなとは思いました。動きは特殊だと思いますし、伸びしろがめちゃめちゃあると思う」
技術や身体能力の高さだけではない。ショートという過酷なポジションで飯を食ってきた人間にしかわからない嗅覚が、18歳の才能に反応した。遊撃手の大先輩をも唸らせたその原石が、未来で輝くかもしれない。
(飯田航平 / Kohei Iida)