7四死球の屈辱から中2日で激変…育成右腕が2回無失点 どん底で響いた斉藤和巳2軍監督からの言葉

相原雄太【写真:飯田航平】
相原雄太【写真:飯田航平】

育成・相原が26日のヤマハ戦で2回無失点の好投

 マウンド上の表情から、3日前の悲壮感は完全に消えていた。「脳みそが強くなっているなと実感しています」。試合後、少し照れくさそうにしながらも確かな口調で語ったのが相原雄太投手だ。

 B組が26日に行った社会人・ヤマハとの練習試合。相原は3番手として5回からマウンドに上がり、2回を投げて無安打無失点の好投を見せた。23日の王子戦では1回1/3で7四死球と大乱調に陥り、放心状態となっていたが、この日の投球内容は一変した。

「前回よりもはるかに良い内容。こっちとしても安心した」と斉藤和巳2軍監督も笑顔を見せた好投。たった中2日で一体何が変わったのか。その裏には、どん底の状態で指揮官と交わした対話と、自身の内面と向き合って導き出した思考の整理があった。右腕の励みになった、先輩2人の姿とは――。

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続きの内容は

斉藤監督が相原にかけた「叱責ではない言葉」の全容
大乱調の原因となった「技術以前のミス」とその解消法
仙台大トリオ共演が相原を変えた「特別な刺激」

「ピッチャーのMVPは相原」

「(3日前と)別人とまではいかないけど。1イニングという予定ではあったけど、『もし(状態が)良かったら2イニング目もいかせようよ』ってピッチングコーチと話していたので」。ベンチで見守った斉藤監督の言葉が、相原の充実ぶりを表していた。1イニング目の投球と表情を見て、指揮官は迷わず続投を決断。その期待に応え、右腕は2イニング目も難なく3者凡退に斬って取った。

「相原が2イニング投げてくれたことで、その後もピッチャーの運用が楽になった。ピッチャーのMVPは相原。助かった」。安堵と称賛が入り混じった斉藤監督の表情は、右腕への期待の裏返しでもあった。

 前回の降板直後、斉藤監督と話し込む相原の姿があった。「こういう経験はなかなかない。この結果をしっかりと受け止めて、どう自分の成長に繋げていくか」。叱責ではなく、未来へ向けた言葉。それが相原の背中を押した。「きょうは2イニング目にビビることはなかったし、しっかり腕が振れたところは良かった」。マウンドに上がる前に監督の言葉を思い返し、失敗を糧に変えた。だからこそ、予定外の2イニング目でも腕が縮こまることはなかった。

切り替えた“シンプルな思考”

 なぜ前回はあれほど崩れたのか――。相原自身が明かした要因は、技術的な不調ではなく、心の向き先にあった。「キャンプの期間中にずっとやってきたことを、前回は試すことばかりになってしまって……。打者との対戦ができていなかった」。フォームのことや、キャンプ中の課題――。やりたいことが多すぎて、頭の整理がつかなかった。その結果、マウンド上では「自分」とばかり戦ってしまった。

「ピッチング練習だと思って投げて、ああいう結果だったので。きょうはちゃんと『打者を抑えにいくんだ』と」。その反省から、今回は思考をシンプルに切り替えた。

 具体的に変えたのは、投球のリズムだ。「どうしても試合から遠ざかっていたので、ゆっくりゆっくりと考えながら投げてしまっていました」。考えすぎる隙を、自ら作り出していたことに気づいた。この日は心の中でリズムを刻み、意識的にテンポを上げた。考える暇を脳に与えないことが功を奏した。

仙台大出身トリオが共演

 この日のグラウンドには特別な空気が流れていた。大関友久投手、川村友斗外野手、そして相原。仙台大出身の3人が同じ試合に出場していた。「なかなかないことなので」と相原も白い歯を見せる。先輩の大関や川村が結果を残す姿は、何よりもの“栄養剤”となる。「当たり前ですけど、大関さんの投球もいい刺激になりました。そこを目指して僕も頑張りたい」。昨年は3軍暮らしが続き、実現することができなかった先輩たちとの“同じ舞台”。その喜びも良い意味で右腕を駆り立てた。

「悪いイメージは払拭できたと思う」と語る相原の顔に、もう迷いはない。自身が生み出した足枷は、自らの手で拭い払った。「これからどうしていくかが大事」という指揮官の言葉通り、この日の好投を糧に支配下登録へと一歩ずつ近づいていく。

(飯田航平 / Kohei Iida)