首脳陣が驚いた2人の急成長
想像以上の成長に誰もが思わず息を呑んだ。20日に行われた紅白戦。ともに高卒3年目の育成投手2人が躍動した。2回1安打無失点の好投を見せたのは藤原大翔投手。特に主砲・山川穂高内野手に対しては直球を4球続けて投げ込み、二飛に打ち取るなど、その投球にはベテラン選手からも感心の声が上がるほどだった。
藤原の後に投げた左腕、長水啓眞投手も1回無失点とアピールに成功した。そんな2人の投球を倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)も高く評価する。
「もう素晴らしかったですね。特に藤原は、去年A組で投げて課題がたくさん残るピッチングでしたけど、この1年ですごく大きな成長を遂げたなと感じています。将来が楽しみでしょうがない。長水も同じように、この1年ですごく成長した選手の1人なので楽しみですね」
こう語る口調には、期待を超えた確信めいたものが漂っていた。しかし、マウンドを降りた藤原と長水の口からこぼれたのは安堵よりも、むしろギラついた「対抗心」だった。若干20歳の両腕が明かした本音とは――。
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続きの内容は
藤原が明かした長水への「悔しい」の真意
佐倉が明かした投手陣攻略の「野手の思惑」
4人だけが知る「クビがある」年の切実な本音
燃やす対抗心…「あいつが活躍したら悔しい」
「あいつ(長水の投球)も良かった。一緒に呼ばれて嬉しかったんですけど、やっぱり『勝ちたい』という思いはありました。普段はめちゃくちゃ仲が良いんですけど、僕は同学年が活躍したら悔しいです」
こう明かすのは藤原だ。直後に投げた長水の好投を見た右腕は、自身の投球を手放しで喜ぶことはしなかった。仲が良いからこそ、負けたくない。その感情は、長水もまた同じだった。
「あいつ(藤原)『やったな』と。僕も抑えるしかないじゃないですか。タイプは違っても、僕らはやっぱり比べられるので」。ブルペンで肩を作っていた左腕にとって、藤原の投球は何よりの刺激になっていた。
4人が共有する覚悟…「クビがある年」
2人のほかに、高卒3年目の育成選手には中澤恒貴内野手と佐倉俠史朗内野手がいる。投手と野手の違いこそあれ、藤原と長水の躍動は心に火をつけるには十分だった。「刺激になりますし、逆にあいつらが(A組のメンバーを)抑えているってことは、あいつらを打てば(1軍に上がれる)可能性が出てくるんじゃないかなって。そういう考えもできるんで」と佐倉は口にする。
4選手には支配下を勝ち取るという共通の“目標”がある。何度も4人で囲んだ食卓。交わされる会話は多岐にわたる。その日の試合の感触、野球の技術論、そしてプライベートな雑談。だが、最後に行き着くのは決まって同じ話題だ。
「3年目で契約期限が切れるので、今年は支配下になれないと『クビがある』という年なので。だからみんなで『今年支配下になろう』という話はよくします。誰か欠けても悲しいですし、でもそういう世界に自分たちがいることは分かっているので。全員でライバル意識を持ちながらやっていけたらなと」
リーダー気質の佐倉はさらにこう続けた。「4人中4人、支配下に行きたいじゃないですか」。無邪気さが残る笑顔の裏で、全員が「3年目」という期限の重みを理解している。20歳の若者がこぼす「クビがある」という言葉に胸が締め付けられる。「野球のときはライバル。でもプライベートはしっかり仲間です」。その絶妙な距離感が、4人の成長を加速させている。
同期の支配下選手には前田悠伍投手と藤田悠太郎捕手がいる。「同じ土俵でやりたい」。長水が発した言葉は4人の総意でもある。背番号が2桁になる日まで互いの背中を追い、時に突き放しながら、グラウンドを這いつくばっていく。高卒3年目の春、これまでとは違う存在感が確かにある。
(飯田航平 / Kohei Iida)