「新人王はすごく獲りたい」
「今年は『絶対にやってやる』という気持ちが、去年とは全然違います」。ユニホームの上からでも違いがわかるほど分厚くなった身体が、前田悠伍投手が今季にかける思いを何よりも雄弁に物語っていた――。
高卒3年目を迎えるドラフト1位左腕にかかる期待は、これまでとは質が異なる。有原航平投手の移籍によって生じた“180イニング”という大きな穴。チームにとっても、そして前田悠自身にとっても、「若手の成長株」以上の期待がのしかかる時期に来ている。
倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)は、前田悠の投球をチェックした印象をこう語る。「自主トレをやり込んできたっていうのはすごく見える。そういうところはすごく評価してますね」。こう評したうえで、この20歳が開幕ローテーションに入るための“条件”をこう明かした――。
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続きの内容は
前田悠伍が告白した「過去2年間の心残り」
自信を裏打ちする「2年目との明確な差」
「新人王はすごく獲りたい」を実現するために
「単純にバッターを抑えられる確率が高い人が1軍のローテーションに残るし、どうしてもそこは他の選手との比較にもなります。例えば、悠伍がストレートのスピードが何キロになったから使うとか、そういう話ではないです。何キロであったとしても、抑える確率が高いと評価した選手がローテーションに残っていく。もちろんそれぞれの球の課題っていうのはあるんですけど、総合的に誰が1軍のピッチャーとして、このチームで抑える確率が高いのかっていう順番、その中で決まっていきます」
チームの危機を飛躍のチャンスに
誰よりもいま立っている“現在地”の厳しさを痛感しているのは、他ならぬ前田悠伍自身だ。「今回も開幕から(1軍でという思い)っていうのは一緒なんですけど、今思えばその気持ちが全然足りてなかったなっていうか……」。ポツリと漏らした言葉だが、成長を実感しているからこそ、出てくる本音だ。1年目は「投げられたらいいな」という希望。2年目は「ローテに入りたい」と願いつつも、その思いが十分ではなかったという。3年目を迎える今季は、明らかにこれまでとは目の色が違う。
「開幕を、というところは一緒ですけど、自信も違います。やってきた量も2年目と比べたら全然違うし、今のほうが圧倒的に多いので。その分の“やってきたから”ということが自信に繋がっている部分もあるので、それが全然違います」
そう言い切る表情に曇りはない。そして、周囲の期待の変化もヒシヒシと感じているという。「有原さんが抜けたので、その穴を埋めてほしいというのはすごく感じるので。自分自身も埋めたいなと思っていますし、そうなれば自分にとっても、チームにとってもマイナスになることはないのでプラスかなと思います」。言葉を濁すことなく、チームの危機を自らの飛躍の好機と捉える強心臓ぶりだ。
「開幕からローテーションを守って1年間、1軍で投げ続ける、という思いが強くある。それを成し遂げていきたいですし、それができたら新人王も近づいてくると思うので。1年間離脱せずに1軍で投げ続けるっていうのが目標ですね。新人王はすごく獲りたいです」
3年目の春――。オフに積み上げてきた練習と確かな自信、そして何より、エースの不在を好機と捉える強靭なメンタリティが前田悠に宿る。大器の片鱗は昨年の初勝利で見せつけた。本当の主力へと飛躍する瞬間は、もう目の前まで来ている。
(飯田航平 / Kohei Iida)