日米7球団の争奪戦…なぜモレノを獲得できた? 1年以上伝えた誠意「お金じゃない」

入団会見に臨んだジョナサン・モレノ【写真:竹村岳】
入団会見に臨んだジョナサン・モレノ【写真:竹村岳】

18歳以下のキューバ代表では主将も務めていた

 キューバの逸材獲得の裏にはお金以上の誠意があった。なぜ、日米で争奪戦となっていたトッププロスペクトを獲得できたのか。ホークスは14日、ジョナサン・モレノ内野手の入団会見を行った。「日本のチームの中でもとてもいいチームだと知っていましたし。しっかりと準備をして試合に臨む、いい選手がたくさんいることをわかっていたので。プレーがしたいなと思いました」。

 2007年9月生まれの18歳。右投げ右打ちの内野手だ。18歳以下のキューバ代表にも選出され、昨年9月に行われた「ラグザス presents 第32回 WBSC U-18 野球ワールドカップ」にも出場。遊撃手として最優秀守備賞にも輝き、自らの持ち味にも「自信がある」と胸を張る。

 背番号「174」で育成契約からのスタートだが、日米が注目した有望株を獲得したことは間違いない。モレノのもとには米国の4球団、NPBからはホークスを含む3球団からアプローチがあったという。なぜ、福岡でプレーすることを選んだのか。そこには何度も足を運んだスカウトの存在があった――。

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続きの内容は

【続きを読むと分かる3つのこと】
・モレノがくだした「決断の理由」とは
・7球団争奪戦を制したスカウトが「最初にしたこと」
・ホークスとキューバの友好関係を繋ぐ「功労者の名前」

萩原健太スカウト「最初から動きが違うなと」

「本当にすごい話がたくさん来ていた、と。アメリカに行けば(契約の規模は)うちの20倍や30倍になっていたはず。お金で言ってもアメリカの方が大きかったし、みんな(多くの球団)が欲しがっていたんですけど。彼はよく選んでくれたなと思います。お金勝負になったら、僕たちは手が出ないので。色々な人から『今回はレアケースだね』と言われました」

 声の主は、中南米で担当スカウトを務める萩原健太スカウトだ。モレノを初めて見たのは、2024年にパナマで行われた世界大会。「最初から動きが違うなと思いましたね。教えて上手くなったんじゃなくて、天性のものを感じました」と、魅了された。すぐさまキューバを訪れ、モレノの実家に足を運んだ。伝え続けたのは、心からの誠意だ。

「パナマで見てすごく高い能力を感じましたし、将来的に18歳まで待ってくれたら『チャンスはある』とご家族には伝えました。僕の言葉を聞いて待ってくれましたし、僕たちが彼を獲らないとなっていたら違う球団に行っていたと思うので。ドラフトには運の要素もありますけど、外国人選手はOKしてくれれば決まる。そういう意味では何か(伝わったものが)あったのかなと思います」

 モレノは、育成のダリオ・サルディ投手と地元が近いという。同じ学校だったこともあり、左腕からモレノの家族も紹介してもらった。「サルディを獲得した時も、何度も通いました。その時も『今までたくさんの話をもらったけど、うちまで来たやつは初めてだ。だから他の話は全部聞かない』と言ってもらいましたね」。海の向こう側で日本人スカウトが築き上げていた信頼が、今回の契約に繋がった。

「どういう人かわかってもらわないと人生を預けられない」

 有望な選手にはすぐに声をかけ、動向を追い続ける。スカウトとして貫く誠実な姿勢だ。「最初に話していた金額よりも、実際の契約で提示する金額が安い。そんなことは海外でも珍しくありません。『こいつに任せておけば大丈夫だ』と思ってもらうには、絶対に嘘をつかないことです」。中南米スカウトを務めて12年目。擦り減らした“靴底”が、積み重ねた努力を物語っていた。

「僕の中でいつも思うのは、『1番に行かなければならない』ということです。ヤンキースやドジャースだとか、大きな球団の後に僕たちが会いに行ってもインパクトがないじゃないですか。今回のモレノにも、どこよりも早く声をかけて家族に会いましたし。どういう人かわかってもらわないと、人生を預けることはできない。だからこそ、まずはちゃんと信頼できる人だと知ってもらうことが大事なんじゃないかなと思います」

 昨季パ・リーグMVPに輝いたリバン・モイネロ投手をはじめ、アルフレド・デスパイネ外野手やジュリスベル・グラシアル内野手ら、これまでもキューバ出身の選手がホークスを支え続けてきた。有望な選手を獲得できるのも、キューバ連盟と友好的な関係を築いている証。「もし僕が何か悪いことをしてしまったら、やっぱり選手は来ないですよ。『あいつのチームはダメだ』となってしまうので」。世界の裏側からも支えられ、ホークスは強くあり続けている。

 葛藤を繰り返し、海を渡ってプレーする決断を下した18歳。モレノも「決めるのは簡単ではありませんでした。すごく考えたんですけど、このチームに来ることが自分にとって一番いいなと思いました」と胸中を語った。“世界一のショート”になるために、まずは支配下登録を目指していく。

(竹村岳 / Gaku Takemura)