優勝旅行は「僕ら1軍ができる最大の恩返し」
ソフトバンクが9日(日本時間10日)、優勝旅行先のハワイ・ホノルルに到着した。帰国予定の14日(同15日)まで約1週間、常夏の島で英気を養う。到着後、小久保裕紀監督が取材に応じ、2年連続のリーグ優勝と、5年ぶりの日本一に輝いた1年を振り返った。また、来年の打順構想や戦い方についても言及した。主な一問一答は以下の通り。
――去年に続いての優勝旅行。
「去年も優勝したのでV旅行はありましたけど、やっぱり日本一になって来るのとでは全然違いますね」
――優勝旅行、今年は420人を超える大所帯。
「スタッフの人たちはこういう機会でしか来られないと思うので。メジャーみたいにスタッフの評価制度がないじゃないですか。今の日本のスタイルであれば、トップチームが頂点を目指すのにみんながそこに向かって、同じ山を登っているんだという1つの証がV旅行だと思うんですよ。だから4軍のスタッフに配置されたとしても、3軍であったとしても、みんなで同じ方向を向く。同じ山を登ることが大事なことなので。それが僕ら1軍ができる最大の恩返しなので」
――V2、V3と積み重ねていくにつれて難しくなる?
「難しくなっていきますよ。それはそうです。それは歴史が証明しているじゃないですか」
――チームとして、歪みみたいなものが生まれる心配はない?
「そこは全然心配していないですね。チームとして、そういう難しさではないかなと思います。追われる立場になるわけですし、打倒ホークスで各チームが来るわけなので。そういう難しさであって、中からのっていうものではないかなと思います」
――チームを一度「壊す」と話していた。新しいものを作らないと、より強いチームにはならない?
「やっぱり(孫正義)オーナーの生き方、ソフトバンクグループそのものの考えもそうですけど、現状維持では満足されないじゃないですか。それこそブロードバンドを立ち上げた時に、キャッシュフローだけで5、600億円で回したところから今の企業になっているわけですから。そんなに冒険をしなくても良かったわけでしょ? でも、そんなところで終わらないっていうオーナーがいらっしゃって。我々も現場を預かってる中では、やっぱりチャレンジを続けることでしか、進化や成長はないなと思うので。だからチームっていうものを預かる意識を持って、前に進めようとは思っています」
来季の打順構想「長谷川がどういう風に見ていたのか」
――現時点で来季の打順構想は?
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続きの内容は
・長谷川コーチが描く来季打順の「プラン」
・中村晃は来季いつ戦線復帰?最新の「現状」
・理想は「不動の打線」今年の流動制に隠された「監督の信念」
「今の時点では打順っていうのは全く考えていないです。今年まで2年間、村上(隆行)さんにずっとやってもらっていたので。長谷川(勇也)は打順に関してはノータッチだったのが、今シーズンの5月からスキルコーチとしてベンチに入り始めて。それから1軍の首脳陣の会食、コーチミーティングにも参加した長谷川が、どう見ていたのかっていうのが、僕の中ではすごく興味があるところなので。そこは僕の方からは言わず、どういうふうに考えてるのかっていうのは話したことがないので。それをすると、やっぱり村上さんに失礼なことですし、組織としては良くないので。だからどう考えているのかは、すごく興味がありますね」
――長谷川コーチに驚かせてほしい?
「驚かせてほしいというか、どう考えているのかなっていう。そういう話をしたことがないので。ただ打順なんて春季キャンプが始まって、それから誰が健康でというのは分からないじゃないですか。だから決められる問題じゃないですけど。彼が考えるオーダー、4番を重視するっていうのは最初に言ってましたけどね。今年に関してはもう、4番は流動的になりましたけど。その辺の話はちょっと長谷川ともしないといけないかなとは思うんですけど」
――監督の理想としては4番を固定して戦いたい?
「それは普通に山川(穂高)が、日本シリーズみたいな活躍をしてくれたらハマるのが普通だとは思います」
――長谷川さんが首脳陣の会食に入るのは監督が決めた?
「5月は伴さんと2人で入れてくれと、城島(健司)CBOにお願いしました」
――それ以来、首脳陣の会食には参加するようになった?
「それはもう、スキルコーチはコーチ扱いなので。一応スタッフの部類に入るって言っていたけど、ベンチにも入っているので。だから伴さんも会食には全部行ったし、1軍の首脳陣として戦う上で必要なメンバーの中に入ってもらいました」
――来季の中村晃選手の起用について。
「まだ話もしていない。まず戦える体に戻すっていうところなので。どれくらいの時期から合流できるかは、今のところはまだ(わからない)。ちょっとジョギングもできていないみたいなので。焦らす必要は全くないと思いますし。そこは体次第。まずはそっち(治療)をしてもらうってことですね」
――来年も必要な戦力?
「力は必要なのは当然です」
オーダーは「動かさない方がいいという考え」
――日本一のチーム。追われる立場としてどこのチームが怖い?
「他球団の補強が全部出揃っているわけじゃないからね。ただ、日本ハムとは5分の戦い。クライマックスも最後に勝ったほうが日本シリーズ進出という。シーズン8月後半から9月まで、ほぼデッドヒートの争いがあったので。そう考えると、当然強敵やなとは思います。ただ他球団もこの先、補強がどのように進んでいくかはまだ分からないので」
――今シーズンは離脱者が多い1年だった。怪我を防ぐ策は考えている?
「(柳田悠岐は)試合中の自打球とかね、近藤(健介)も(疲労が)蓄積された先のヘルニアでしょ。なかなか防ぎようがないですね。今いるメンバーが最強で、どう組み合わせたら勝てるかっていうのを考えるのが(監督の)仕事なので。メディカル部門はこれだけ離脱者が多かったので、『あいたー』と思っているはずなんでね。そう思うことなく次の手を打たなければ、それはその部門での責任はあると思うので。その辺りも含めて『来年は頼みますよ』ということですね。でも試合中にボールが当たったとかはしょうがないですよ、正直。周東(佑京)の場合、膝は多分野球人生でずっと付き合っていかなきゃいけないと思うので。それをいかに長期離脱がないように使っていくかが僕らの仕事ですからね」
――来年はフルメンバーが揃えば、かなり競争が面白くなる?
「そうですね。新庄(剛志)監督みたいに、最初からそういう目的を持ってチーム編成をしているわけではないですけど。足を絡めた方がいいピッチャーの時の打線と、そうじゃない時ははっきり分けていたので。やっている僕らからすると、やっぱり嫌なところはあったんでね。でも、そこは目指さないですね。チーム内競争があるとチーム強化につながるので、そこは煽りますけど。でも、それは目標には置かないかな。正直、相手ピッチャーによって出る選手を変えるところまでは考えていないですね」
――メンバーは固定していきたい?
「基本的に僕はメンバー固定で、オーダーは動かさないほうがいいという考えなので。今年はそれができなかったから、臨機応変な戦いをしたっていうだけなんでね」
――臨機応変な戦い方をする中で、こうやっていけば戦えるみたいな指標は見つかった?
「そこはもう自分の信念を貫き通すことが勝利につながるのか、貫くことがマイナスなのかということなので。今年は貫こうと思っても貫けなかった。なのに『そこにこだわってどうするの?』というもう1人の自分がいただけなので。全ては勝つために、どういう決断をするか。それがずれたらだめなので。自分の信念はあるけど、その信念は勝つために発揮されるべきでしょう」
――孫オーナーの存在があり、勝たなきゃいけないチームを預かっている監督の思いは?
「求められたものに応えていくのが我々の仕事だと思いますけどね。現状で満足して何年に1回勝てばいいという思いで球団を持たれているわけじゃないので。『目指せ世界一』と言っているわけですから。そうじゃないと、組織は強く発展していかない。孫オーナーがいるからこそ、そういうチームを作っていこうという思いがあって(理想に)近づくと思うので」
――監督自身の中でも変化、進化っていう部分を意識している?
「やっぱりコンフォートゾーン(落ち着ける空間)って居心地がいいじゃないですか。でも、振り返った時にその時ってあまり成長できていないですから。チームとして居心地がいいなっていう時は危険やというくらいに思っておいたほうがいい。そりゃ居心地はいいですよ、動かないほうが。でもそれじゃやっぱり組織は強くならないんじゃないですかね」
(飯田航平 / Kohei Iida)