選手会長就任を「断り続けていた」 “受諾”の理由…栗原陵矢が決心した「佑京さんの姿」

契約更改に臨んだ栗原陵矢【写真:森大樹】
契約更改に臨んだ栗原陵矢【写真:森大樹】

選手会長就任…中村晃も「断り続けていたのは知っている」

 先輩たちの姿を見ていたからこそ、自然と決心はついていた。断り続けた選手会長就任。その舞台裏を、自らの口で明かした。栗原陵矢内野手は6日、契約更改交渉で1000万円ダウンの年俸1億4000万円(金額は推定)でサインすると「個人的にも良い数字を残していきたいですし、リーグ2連覇しているので。選手会長として、そういうところをつないでいけるように」と決意を新たにした。

 今季はオープン戦で右脇腹を痛めて開幕1軍入りを逃した。4月17日に初昇格を果たしたものの、7月3日に登録抹消されるなど、80試合出場にとどまり打率.267、8本塁打、40打点。9、10月は打率.359と勝負強さを発揮し、終盤の戦いを支えたが「満足いくような数字ではなかったですし、選手としてもっとたくさん試合に出たいです」。不甲斐なさを感じているのは、他の誰でもない栗原自身だった。

 2023年には自ら志願して副キャプテンを務めるなど、キャプテンシーを示してきた背番号24。今年11月24日に行われたファンフェスティバルで、2026年から選手会長に就任することが発表された。前任である周東佑京内野手から受け継いだバトンだが、栗原は「断り続けていた」という。なかなかつかなかった決心――。清々しい表情で、胸中を明かした。

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続きの内容は

辞退し続けた栗原の心を動かした「ある瞬間」
好不調の原因だった栗原が感じた「左半身の違和感」
契約更改直前、栗原の決意を後押しした「エレベーターでの運勢」

「佑京さんの姿を見て責任感を持ってやりたいなと思った」

「シンプルに、そんなに人前で話すことも得意じゃないですし。『みんなをまとめて引っ張るぞ』ってやりたいかと言われたら、そんな(キャラクター)でもないじゃないですか。ただやっぱり今年の自分の成績とか、佑京さんの姿を見て、責任感を持ってやりたいなと思ったので」

 明るいキャラクターはもちろん、真面目な性格は誰もが理解している。一方で、自分の中で“照れ”があったことも認めた。決意した最大の要因こそ、ともにチームを支えてきた周東の凛々しい姿。「僕も断りつつも、心のどこかでは『(自分が)やるやろうな』というか。そう思っていた中で、日本シリーズで(正式に)言われた感じです」。抱いていた迷いは、自然と消えていた。“周東の次”だからこそ、自分が選手会長にならなければならない。そう覚悟を決めた。

 2020年から2年間、選手会長を務めた中村晃外野手も「断り続けていたのは知っています」と明かす。ベテランの1人として、どのようにしてバトンが渡るのかしっかりと見守っていた。自主トレをともにした栗原が、チームリーダーを務める。“門下生”の就任に「やると決めたなら頑張ってほしいですし、必ず栗原のためにもなる。彼なりの選手会長でいいと思いますよ」とエールを送った。

11月には腰を手術…強化の必要性を感じた“左半身”

 栗原は11月に右第5腰椎仙椎椎間板ヘルニアにともなう、経椎弓間的全内視鏡下椎間板摘出術を受けた。1月の自主トレもリハビリがメインになる予定だ。今シーズン中も、自分の中で“違和感”を抱いていた。「今年やっていて思ったのは、左膝や左肩がちょっと機能していないなと感じるところが多かったので。そういう細かいところを詰めながらやっていきたいなと思います」。

 2018年には左肩、2022年には左膝を手術した。どちらも長期離脱で、リハビリに長い時間を要した苦い経験だ。「今年のシーズン後半も、左膝が痛いんじゃなくて筋力的に弱いなと感じていた。いい時の感覚でスイングしても、映像を見るとちょっと違う。何が原因が探っていると、つながるところはあるのかなと」。“左半身”を強化することで、身体のバランスを整えることがテーマの1つ。2026年、選手会長として歓喜の秋を迎えたい。

「自分がやりたいっていうのと、(過去に選手会長を務めた)先輩たちを見て純粋にカッコいいなと思っていました。ギータさんや長谷川(勇也)さん、(今宮)健太さん、(中村)晃さん。もちろん佑京さんもですし、ああいう先輩たちになるためにというところですね」

 契約更改とは、来シーズンへの“出発”を意味する日。12月6日に契約書へ記したサインは、決意の証だ。「さっきエレベーターに乗っていたら、かに座(の運勢)が良かったんですよね。『なんかアクションを起こすのにはきょうがめっちゃ良い』みたいな書いてあったので、どんどんアクションを起こしていこうかなと思います」。口にした“ユーモア”も栗原らしさ。選手会長として、自分だけの姿を貫いてほしい。

(竹村岳 / Gaku Takemura)