柳田悠岐が口にした「たったの7年」 引退プラン撤回の裏側…思いが変わった“明確な瞬間”

契約更改交渉に臨んだ柳田悠岐【写真:森大樹】
契約更改交渉に臨んだ柳田悠岐【写真:森大樹】

示した覚悟「レギュラーではないので」

徹底した独自取材、データ分析
選手の本音や核心に迫る「鷹フル」

 ソフトバンク・柳田悠岐外野手が29日、みずほPayPayドーム内の球団事務所で契約更改交渉に臨み、2年連続で1億円ダウンとなる3億7000万円でサインした。2019年オフに7年契約を結び、来季が最終年を迎える。契約時には「(7年契約の満了で)フィニッシュ。そこまで決まっています」と話していたが、来期以降の現役続行への思いを示した。交渉後、取材に対応した柳田の一問一答は以下の通り。(金額は推定)

【テレビ囲み】

――サインはした?
「はい」

――金額の増減は?
「下がりはしました」

――具体的にイメージしていた金額と比べてどうだった?
「いえ、イメージ通りです」

――球団からはどんな評価の言葉があった?
「怪我したところは残念でしたけど、リハビリに取り組む姿勢、ポストシーズンのところであったりを評価していただきました」

――今シーズン振り返ってどんな1年だった?
「やっぱり試合に出ていないですし、本当に残念なシーズンでした。けどチームは優勝、日本一になったので、そこは良かったと思います」

――一番印象に残っている試合や打席は?
「(右脛骨の骨挫傷の)怪我をした自打球を当てた打席と、クライマックスシリーズ・ファイナルと日本シリーズでのホームランは特に(印象に)残っています」

――日本シリーズ第5戦での阪神・石井大智投手からの同点2ランを振り返って。
「ホームランだと思いました。打った時は同点に追いつけたので、なんとかきょう勝ち切りたいっていう気持ちでした」

――改めてチームとして日本一になれた喜びは?
「昨年、横浜スタジアムでDeNAの胴上げを見た光景はすごく覚えてますし、終わり方がそうだったので。勝って監督を胴上げして終わりたいという気持ちは多分みんな持っていたと思いますし、それが叶って素晴らしい終わり方だったかなと思います」

――特に序盤は故障者が続出した。若手の選手がどんどん活躍してタイトルを獲得した。
「本当にみんなが素晴らしい成績を残した。自分も試合に出てないので、うかうかできないですし、競争は始まっていると思うので。コンディションをまず万全にして、競争に勝てるような準備をしていきたいなと思います」

――若手がこれほど活躍すると、感化される部分はあった?
「もちろんです。立場的にもレギュラーではないので。結果と自分のバッティングで、使っていただけるような打席を増やしていきたいなと思います」

柳田悠岐【写真:加治屋友輝】
柳田悠岐【写真:加治屋友輝】

7年契約最終年は「カムバック賞を取りたい」

――1軍復帰後の体の感触はどうだった?
「どうなんですかね。体はすごく良くなっていたので。結果はたまたまかも知れませんけど、いい内容の打席も多かったと思いますし。これを1年間続けることが難しいんですけど、それを続けられるようにすれば、おのずと結果はついてくるかなと思います」

――オフシーズン重点的に取り組みたいことは?
「筋トレ、ランニング、素振りです」

――特に昨シーズンから自重トレーニングに取り組んでいるとおっしゃっていた。
「全部しています。ウエートトレーニング、自重、色々な怪我予防のトレーニングだったり、そういうのもやっています。ランニングもしてますし、素振りもしています」

――自主トレの具体的な場所は?
「日本国内で、日本ハムの清宮(幸太郎)選手と、横浜DeNAの梶原(昂希)選手と、ロッテの安田(尚憲)選手と、ホークスの笹川吉康選手とやります」

――7年契約最終年の来シーズンは、どういう1年になる?
「その先に契約がくるのかどうかも、来シーズンの結果次第だと思うので。来シーズンしっかり活躍して、その先の契約を考えていただけるような成績を出したいなと思います」

――具体的な目標は?
「カムバック賞を取りたいです」

柳田悠岐【写真:竹村岳】
柳田悠岐【写真:竹村岳】

体は衰えるも…「技術は増している」

【ペン囲み】

――近藤健介選手が「長老(柳田)を差し置いて僕がDHになるわけにはいかない」という話をしていた。
「いえいえ、僕は守備に就きますよ」

――守備の意識は?
「『トレーニングや』と思ってやっています。ベンチから左翼に行くランニングもそうですし、瞬発力とかも大事なので。そういうのも自分のためだと思ってやっています」

――来年も、しっかり守れる体を作る?
「もちろんです。それがバッティングにもつながると思うので。しっかり準備したいなと思います」

――ウエートが主流になってる中で、やっぱり素振りとランニングも大事にしたい?
「そうですね。素振りはもう小さい頃からずっとやっているので。プロに入ってもずっとやっていますし」

――そこが打撃で大事になる部分?
「素振りが良ければ打てるので」

――ランニングの量もいつも通り?
「いえ、変わらないですね。例年通りです」

――復帰時、体が良い形だったのはトレーニングの成果?
「だと思います。じゃないと多分復帰してから打てないと思うので。しっかり準備した結果がポストシーズンで出たかなと思います」

――トレーニングを続けている?
「そうですね。(シーズンが終わって)2、3日は休みましたけど、そこからはやっています」

――打撃に関して、体が万全だった頃と比べて、ご自身の感覚ではどう?
「いや衰えていますよ。でも打てます。技術は増していると思います」

同学年・前田健太と「仙台か福岡で食事に行こう」

――中日・大野雄大選手がカムバック賞を獲った。
「そうなんです。雄大が獲っていたので『あ、いいな』って。僕も2年試合が空いたので、条件満たしているなって」

――あとは同世代でいくと、楽天への入団が決まった前田健太投手?
「はい」

――2013年の交流戦で前田投手から3ランを打った。
「覚えています。うれしかったので」

――交流はある?
「連絡が来て。楽天に行くっていうのを聞いたので。『同じパ・リーグや。仙台か福岡で食事に行こう』っていう話をしました」

――何回も対戦することになると思う。
「向こうは米国でしたし、やっぱりいいピッチャーなので。でも試合になったら敵なので、打つしかないと思います」

――少なくなった同世代を引っ張っていきたいっていう思いはある?
「(自分のことで)いっぱいいっぱいです。でも打たないと生き残れないので。打つしかないです」

――カムバック賞を獲るための成績のイメージは?
「いや、ないですけどね。どうやったらカムバック賞を獲れるのかは、ちょっとわかんないですけど。やっぱり良い成績を残すしか方法はないと思うので。良い成績を残したいです」

契約更改交渉に臨んだ柳田悠岐【写真:森大樹】
契約更改交渉に臨んだ柳田悠岐【写真:森大樹】

口にした「たったの7年」…契約最終年への思い

――以前、7年契約の終了を一区切りと言っていた。
「その7年前と今ではやっぱり僕の立場というか、そういうのも変わりましたし。環境がガラっと変わったなという風には感じます。たったの7年で」

――もっと続けたいという思いは強くなった?
「自分の体が動く限りは。いいパフォーマンスが出せる自信を持ってプレーできるなら、やりたいなと思います」

――トレーニングをしていけば、まだまだいいパフォーマンスを出せる自信がある?
「でも、ここ2年間は試合に出ていないので。1年間出続ける大変さも分かりますし、ましてや年を取ってその1年間出るっていう経験をしていないので。そこは本当に未知の領域というのはありますけど。そこは、しっかりとした準備をして乗り越えたいなと思います。それを乗り越えれば、先が見えるんじゃないかなと思うので。まずは来年しっかりやりたいなと思っています」

――打って守って、全試合出場はこだわる部分?
「やっぱりたくさん試合に出ないと数字は残らないので。もちろんたくさん出たいですけど、そこはチーム事情もありますし、他のチームメートもいる。自分でコントロールできないと思うので。1試合でも、1打席でも多くグラウンドに立ちたいという思いで、今はいます」

――7年経ったら辞めると思っていたのが、心変わりしたのは、この2年間がやっぱり消化不良だったから? それとも練習してポストシーズンであれだけやれるっていう自分の中での手応えがあったから?
「そうですね。ポストシーズンは本当に、僕もトレーニングとか、そういうところがつながっているなというのは感じました。そのポストシーズンに出るまでは、復帰した時はもう試合に出ないと思っていたんですけど。そこからああいう風に持っていけたので、また自信を取り戻せたというか。その気持ちで来シーズンも戦っていきたいですし、レギュラーになりたいっていう。『俺を使え』っていう風に思いながらプレーできれば、自分のプレーにつながるかなと思います」

――若い時の心境とはまた違う?
「違いますね。若い時は別にそんなに思っていないです」

――野球への飢えみたいなもの?
「わからないですけど。でも一度監督に代打で(1軍に)上がるって伝えられた時も、そこでもう一段階スイッチが入ったというか。また使いたいって思ってもらえるようなプレーがしたいなと思いました」

――若い時は「俺を使え」という気持ちはなかった?
「ないですね。上手くなりたいっていう気持ちは強かったと思います」

再び自主トレをすることになったロッテ・安田との“やりとり”

――この長期契約を結んでから、ここまでの6年間っていうのは結構あっという間だった?
「どうですかね。怪我するまでは長く感じましたけど、怪我してからは早いです」

――リハビリだと1日が長く感じそうな気もする。
「トレーニングしていたら、あっという間でした」

――清宮選手と安田選手は、どういう経緯で自主トレに戻った?
「(清宮は今までも)いましたよ。ヤス(安田)は2年間来てなくて。2年間ホームラン0らしいんですよ。『どうにかしてくれ』みたいな」

――連絡が来た?
「はい。『2年間、500打席ホームラン1本も打ててないので、どうにかしてください』みたいな」

――最近?
「いやいや、シーズン終わったぐらいです」

――佐藤直樹選手は?
「山川(穂高)選手のほうに。アグー(山川)が打たせられる自信を持っていたので。じゃあもうそっちに、と。僕のところ来ても打率.239なので」

――打球は伸びていた。
「いやいや、打率.239なので」

――昨年は1億円ダウンくらいだった。
「それぐらいですね。(減った分は)活躍した選手のところにいきますよ」

――7年契約が終わる来年まで、自らの役割を全うする?
「それはそうでしょ。崖っぷちです、頑張ります」

(鷹フル編集部)