永井智浩編成育成本部長が語る今年のドラフト戦略
果たして来季、新たに“仲間”となるのはどの選手なのか。10月23日に迫ったプロ野球ドラフト会議に向けて、「鷹フル」ではソフトバンクの永井智浩編成育成本部長に独占インタビューを実施。2年連続のリーグ優勝を果たし、充実の戦力を誇るホークスは今年、どんなドラフト戦略を描くのか。その考えに迫った。
ソフトバンクにとって長年、編成面の課題とされてきたポジションが遊撃手だ。長らくレギュラーに君臨してきた今宮健太内野手は34歳となり、野村勇内野手は12月に29歳になる。川瀬晃内野手も28歳となり、5年先を見据えた“ポスト今宮”の育成は急務といえる。
候補がいないわけではない。2022年ドラフト1位のイヒネ・イツア内野手だ。5月30日の楽天戦で1軍デビューを果たした21歳の逸材は、1軍出場こそ1試合のみだったが、これを機にウエスタン・リーグで打撃成績を急速に向上させた。7月以降は打率.319、3本塁打をマークし、編成トップも「イヒネにはすごい期待してますし、順調に成長していると思うんですよね」と評価する。
ただ、永井本部長が続けた言葉にホークスがドラフトに求める“意図”が込められている。有望株がいるだけでは、よしとしない。その言葉にこそ、常勝軍団の編成トップが描くドラフト戦略の意図が隠されている。
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続きの内容は
・逸材がいても遊撃手を獲る。編成本部長が語る“シビア”な育成哲学
・柳田、今宮らの後継者問題。永井本部長が抱く野手陣への危機感
・支配下と育成で指名の見込みは何人? 今年のドラフト戦略
「基本的には(ショートは)取り続けると思います。イヒネのライバルを取らないかと言ったら、そうじゃないですよね」
期待の若手がいるからといって、そのポジションの選手を獲得しないわけではない。「みんなに期待していますけど、いろんなポジションでライバルを作りながら、そこで競争して勝ってくる選手が(1軍の試合に)出てくるものだと思っているので」。球団の方針として掲げているのが、競争環境の重要性だ。
有望な若手がいてもライバルを加えて競争を激しくさせる
「誰かがいるから(そのポジションは)いらないってなると、今年は多分勝てていないと思うんですよ。誰かが怪我したら、勝てないチームになるので。誰かが怪我しても誰かが補えるような、そういう競争の世界を作っておくということが大事なんだろうと考えています」
今季のチームはまさにその方針を体現していた。主力の離脱が相次ぐ中、これまで高い壁に阻まれて出場機会のなかった若手や中堅が次々と台頭して穴を埋め、143試合を戦い抜いた。その分厚い選手層こそが、2年連続リーグ優勝の原動力となったのだ。
たとえ有望株がいようとも、そこに更なるライバルを加え、競争を激化させる。競争が激しければ激しいほど、その競争を勝ち抜いてきた選手の能力が高くなる。このサバイバルを勝ち抜いた者だけが、1軍の中核を担う主力へと育っていく。これがソフトバンク流の育成哲学である。
もう1点の懸念材料が、主力選手の高齢化だ。柳田悠岐外野手は37歳、中村晃外野手は35歳になる。今宮や牧原大成内野手、山川穂高内野手、近藤健介外野手も30歳を超え、ベテランの域に入ってきている。
「年齢は微妙なところなんですよね。若い選手に出てきてもらいたいのと、柳田とか晃にももっと頑張ってもらいたい思いもある。ただ、編成の立場からすると、選手の年齢層が高いっていうことはちゃんと受け止めて、その次世代の準備っていうのは進めないといけないなとは思いますけどね」
今年のドラフト市場には、1位候補として名前が挙がるスラッガーがいる。創価大の立石正広内野手だ。高い身体能力に加え、パワーと脚力を兼ね備え、競合必至と注目を集める。「彼なんかは今年の目玉になってくるでしょうね」と、永井本部長もその評価の高さを隠さない。
今年の指名人数について永井本部長は「どの辺りでうちがリストアップしてる選手が消えていくのかで、ドラフトで取れる人数は変わっていく。5人くらい取りたいなと思っていても、リストが空になったら終わりなので」と語る。支配下での指名は4、5人前後とみられるが、他球団の動向にも左右されそうだ。
また、ホークスは育成指名も大きな特徴となる。4軍制を敷くだけに、例年10人近い選手を指名する。「育成も支配下と一緒ですね。取りたい選手は決まりつつあるんですけど、支配下で指名されたりとか、ウチより先に指名されたりもあるので。(例年と)同数ぐらいをイメージしたいですけど、結果は終わってみないとわからないですね」。一昨年は育成で8人、昨年は13人を指名。今年も同規模の指名を視野に入れるが、こちらも流動的だという。
ホークスの未来を占うドラフト会議。どんな選手を指名していくのか、注目だ。
(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)