杉山一樹が海野隆司へ感謝「僕のわがままを」 松本裕樹も証言した昨季との違い…“迷いのない間″

リーグ制覇し、杉山一樹と抱き合う海野隆司(右)【写真:小池義弘】
リーグ制覇し、杉山一樹と抱き合う海野隆司(右)【写真:小池義弘】

歓喜の輪で強く抱き合った海野と杉山

 ホークスは2年連続のリーグ優勝を飾りました。鷹フルでは主力選手はもちろん、若手やスタッフにもスポットライトを当てながら今シーズンを振り返っていきます。ブルペン陣の柱としてチームを支えた杉山一樹投手と松本裕樹投手が語ったのは、正捕手への“信頼”。シーズンを通して感じた海野隆司捕手の変化を2人が語ります。「僕のわがままを通してくれるし……」。

◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 歓喜の輪の中心で、杉山が“宣言通り”に相棒を持ち上げた。幾度となくチームの窮地を救ってきたバッテリーが、優勝という最高の形でシーズンを締めくくった瞬間だ。リーグ連覇の裏には、シーズンを通して扇の要として成長を遂げた、背番号62の存在があった。

 昨季は51試合に出場し、キャリアハイを更新した海野。今季は正捕手不在の中で開幕したが、シーズンが終盤に差し掛かるにつれて着実に進化を遂げてきた。特に僅差の試合を任されるリリーフ陣は、“相棒”の変化を最も強く感じていた。

 守護神の杉山が「あいつのおかげという部分は、めっちゃありますよ」と最大級の賛辞を口にすれば、同じく勝ちパターンを担う松本裕も、海野の成長を証言する。投手陣が全幅の信頼を寄せるまでになった海野。その進化の裏側にあったものとは――。

会員になると続きをご覧いただけます

続きの内容は

・杉山投手が海野捕手に感謝する「わがまま」の内容
・海野捕手がブロッキングの不安をなくした「秘訣」
・松本投手が証言する海野捕手の「ある変化」

守護神が感謝する「わがまま」

「真っ直ぐとフォークの2球種しかないし、1点差を抑えるとなったら、すごく頭を使うと思う。僕のわがままも通してくれるし、フォークボールには(暴投の)リスクもあるのにサインも出してくれる」

 最終回を締める杉山は、海野のリード面に感謝する。さらにブロッキング技術の向上も、信頼を寄せる大きな理由だ。特に落差の大きいフォークを操る杉山にとって、ショートバウンドを確実に止めてくれる存在がいるからこそ、その投球は輝きを増す。「上手いです。上手くなっています。だからすごく助かります」。シーズン中に少しづつ上達したブロッキング。杉山は目尻を下げ、感謝を口にする。

 海野自身は「ブロッキングに対しての不安は今はあまりないです。余裕ができた、というのはあると思います」と語る。これまでは「ボールを捕りにいかないと」という意識があったというが、今は違う。経験を積み重ねる中で、変化球がショートバウンドした際の“跳ね方の癖”を覚えていった。

「練習というよりも、試合に出続けて(向上した)っていう感じです。ブロッキングの回数よりも、試合数。試合に出ることで慣れてきた、というのもあります。今はピッチャーの特徴で予測しています」

投手陣に伝わる正捕手の覚悟…「迷いが消えた」

 この成長は、松本裕の目にも明らかだった。「自信を持ってサインを出すようになった。去年とかは『迷ってるな』って感じる部分はあったんですけど、今はそういうことはあまり感じない。ピンチの場面でも、パッとサインが決まるようにはなっている気はしますね」。海野の決断力が右腕のリズムを作り出していた。

「根拠も持ってサインを出していますし、ピッチャーに不安な感情を見せるのも嫌なので」。そう語る海野の言葉には“正捕手”としての覚悟がにじむ。シーズンを通して、かけがえのない経験と信頼をその手に掴んだ。

「今年1年、僕が投げる時はずっと海野なので、最後も海野がいいですよね。これだけぶつかってるし」。そう杉山が語っていたことが現実となった。「9回を投げるようになってからは、お互いの考えが一緒の時もあるし、僕が首を振ってサインに納得してくれる部分もある」。意見をぶつけあってきたからこそ理解できる“意図”。互いがそれを汲み取り、最高のボールを投げ込んできた。正捕手不在の中で始まった2025シーズン。海野の成長なくしてこの歓喜はなかっただろう。

(飯田航平 / Kohei Iida)