痛恨敗戦から中5日「モヤモヤはあったけど…」 6連続の直球…杉山が首を振った理由

楽天戦の9回にマウンドへ上がった杉山一樹【写真:栗木一考】
楽天戦の9回にマウンドへ上がった杉山一樹【写真:栗木一考】

26日の楽天戦で今季29セーブ目

 首を振り、迷いなく投げ切った。最後のアウトを奪うと、杉山一樹投手は海野隆司捕手とガッチリと握手を交わした。26日の楽天戦(楽天モバイルパーク)、1点リードの9回に中5日で登板すると、3者凡退でリーグトップタイの29セーブ目を挙げた。

 前回登板の苦い記憶を振り払った。20日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)では同点の9回に登板し、1回を1安打3四死球2失点で敗戦投手となっていた。小久保裕紀監督からは「明日も行くぞ」と声をかけられていたが、チームが連敗したこともあり、5試合登板機会がなかった。

 この日、2アウトを取り、渡邊を追い込むまで6球連続で直球を続けた。海野のサインに首を振ってまで、自ら選択していた。そこには杉山の強い思いが隠れていた。

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続きの内容は

・杉山投手が首を振ってまで選んだ直球に込めた「真の意図」とは
・痛恨の敗戦後、杉山投手が松本裕樹投手に語った「意外な言葉」
・守護神・杉山投手が配球で示した「反省と意思」の全貌

「後手に回るのはやめようという話を直前にしていたので。押し込むしかないなという感じで、真っすぐを僕が選択しました」

 先頭の鈴木を左飛で抑えると、続く宗山も直球で遊飛に仕留めた。勝利まであと1死で代打の渡邊に対しても初球から直球。2球目も首を振って直球を選んだ。そこから2球フォークを挟んだが、最後は再び力のある直球で左飛に。わずか9球で試合を締めくくった。

 20日のオリックス戦では制球が定まらず1死二、三塁のピンチを招くと、そこからリスクを承知でフォークを多投した。しかし、それが裏目に出て四球で満塁とすると、廣岡に適時打、杉本には犠飛を許した。いずれもフォークを捉えられた結果だった。試合後「アウトを取り急いでしまった」と悔しさをにじませていた。

 それから登板がなかった5日間。当然、早くリベンジしたい思いはあった。「モヤモヤはありましたけど、気持ちは全然切れていないです。僕の単なる技術不足なので。考えてもしゃあないです」。リードした接戦では必ず最後に出番が来る。クヨクヨしている暇はなかった。

最後のアウトを取り抱き合う杉山一樹(左)と海野隆司【写真:栗木一考】
最後のアウトを取り抱き合う杉山一樹(左)と海野隆司【写真:栗木一考】

 22日には8回を託されていた松本裕樹投手が被弾し負け投手になっていた。その試合後、杉山は松本裕に「2人仲良くやられてしまいましたね。次に切り替えましょう」と話していた。この日、その言葉通り、8回を松本裕、9回を杉山が無失点でつなぐ完璧なリレーで、マジックを「1」に減らした。

 今季50試合に登板していた藤井皓哉投手が腰痛で楽天戦が行われた仙台3連戦に帯同しておらず、セットアッパーが1人欠けた中での好投だった。「抑えりゃいいので。もう勝つしかない」。27歳の守護神が配球で見せた“反省と意思”。その思いが伝わる投球だった。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)