「いつかやらないといけない」手術への決断
不安な気持ちを残したままでいるわけにはいかなかった。球団は26日、前田悠伍投手が佐賀市内の病院で左肘関節クリーニング術を受け、無事終了したと発表した。競技復帰まで3~4か月を要する見込みで、2026年の春季キャンプからの合流を目指している。
高卒2年目の今季は7月13日の楽天戦で6回無失点の快投を見せ、プロ初勝利を飾った。順調な成長曲線を描いているかに見えたが、その裏では左肘にあった「気持ち悪さ」と戦い続けていた。なぜこのタイミングで手術を決断したのか。若き左腕が抱いた苦悩と葛藤、そして来季への覚悟を明かした。
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続きの内容は
・前田悠伍が明かした、初勝利裏の不安とは
・手術に踏み切った、驚きの「逆算プラン」
・千賀滉大の助言で判明した「器用さ」の意外な真実
逆算した復帰プラン…「計算上いけたので」
「メディカルチェックで、骨棘(こつきょく)からネズミになっていることがわかって。それが原因で投球にも不安定さが出ていたので、絶対にいつかやらないといけない手術でした」
来季のシーズン途中に離脱するという“最悪の事態”を避けるため、このタイミングでの決断に至ったことを明かす。「来シーズンの途中で(骨が)パキっといって離脱するリスクを考えたら、それこそ嫌だなって」。プロ初勝利を挙げた時でさえ「気持ち悪さはありました」と、不安を抱えながらのマウンドだったことを打ち明けた。
手術は初めての経験。「怖い気持ちはあります」と正直な心境を吐露していた。しかし、その表情に迷いはなかった。「トミー・ジョン手術のような大掛かりなものではないので。怖いけど、嫌だなとかはないです」。その背景には、周到な復帰プランもあった。
12月と1月は球団の管理下を離れてトレーニングに専念できる。「『そこでしっかり練習できるのであればやります』と球団に伝えました。計算上いけたので、それだったら手術しようと。もしずっとリハビリをしないといけないなら、やっていなかったです」。春季キャンプまで約5か月。逆算した上で、万全の状態で迎えるための選択だった。
“器用さ”が仇に…千賀の助言も
肘の不調の根本的な原因はどこにあったのか。前田悠はこう明かした。「千賀(滉大)さんからは『手先だけに頼らないように、体全体を使ってコントロールするように』ってアドバイスをもらいました。器用っていうのは、悪く言うと手先で投げているということ。全部のバランスが悪くても最後(指先)で合わせられるんで、もろに肘に来るんですよ」。
手術という大きな決断を下した左腕の視線はすでに来季を見据えている。「プラスに捉えるしかないです。必ず良い方向に向かうと信じています」。来季は高卒3年目の勝負の年。「しっかりローテーションに入って投げるための準備と捉えて頑張ります」と、明るく振る舞う前田悠。苦悩の末にメスを入れた左腕で、来季こそ真の輝きを放つ。
(飯田航平 / Kohei Iida)