「1番・柳田」がもたらした効果 首脳陣が絶賛したワンプレー…「当たり前じゃない」

7年ぶりに1番で起用された柳田悠岐【写真:栗木一考】
7年ぶりに1番で起用された柳田悠岐【写真:栗木一考】

柳田悠岐が「1番・左翼」で起用され2安打をマーク

 背番号9が灯した「H」のランプがベンチの雰囲気を変えた。24日に楽天モバイルパークで行われた楽天戦。2018年以来、実に7年ぶりに「1番」で起用された柳田悠岐外野手が、復帰後初安打を含む2安打をマークした。

 4連敗中の重い空気を払拭した。初回、右翼線へ二塁打を放ってチャンスメークすると、その後先制のホームを踏んだ。さらに、6回無死一、二塁の場面でも右前打を記録し、代走を送られて役目を終えた。試合後、柳田は「点が入ったので、役に立ててよかった」と安堵の表情で振り返った。

 復帰後2試合で7打数無安打。それでも首脳陣が7年ぶりの「1番・柳田」を決断した背景には何があったのか。そして、「当たり前のようで当たり前じゃない」と、2安打以上に絶賛した“ワンプレー”とは――。

会員になると続きをご覧いただけます

続きの内容は

・村上コーチが明かした柳田を1番に置いた理由
・「超ファインプレー」首脳陣が絶賛した場面
・連敗止めた、柳田がもたらした「見えない力」

「昨日(23日)です。試合が終わった段階で、もう決めていました」。そう明かしたのは村上隆行打撃コーチだ。これまでリードオフマンを務めていた周東佑京内野手が背中の痛みで4試合連続欠場。打線はチャンスであと1本が出ず、もどかしい試合が続いていた。そこで、36歳のベテランが持つ“起爆力”に期待したという。

「勢いをつけて欲しいということと、この球場に強いということ(が理由)。調子が出ていない中で、打線の主なところを打たせるより、まっさらなところで行かせた方が彼らしく行けるのではないかと」

 22日に1軍に復帰し、2試合で7打数無安打。それでも「優勝するのに必要な存在」と指揮官が話すように、首脳陣に迷いはなかった。試合前に村上コーチが小久保裕紀監督に進言し、7年ぶりの1番起用が決まった。

 柳田の安打から勢いに乗ったチームは序盤から試合の主導権を握った。終わってみれば14安打8得点。「彼が勢いをつけてくれたっていうのはありがたいですね」と村上コーチも感謝した。

コーチが絶賛「当たり前のようで当たり前ではない」

 だが、村上コーチがさらに絶賛したのは、初回の走塁だった。二塁打で出塁した柳田は、近藤健介外野手の右前打で三塁へ。その後、栗原陵矢内野手の一塁ゴロで一度は本塁へスタートを切った。しかし、瞬時にアウトのタイミングだと判断すると、急いで三塁に戻った。これを見た一塁手の浅村はどこへも送球できず、無死満塁とチャンスが拡大し、先制点に繋がった。

 チームとしては打者がゴロを放った時点でスタートを切る“ゴロゴー”の場面だった。一方で、本塁に突入したらアウトのタイミング。村上コーチはこのプレーに“勝利への集中力”を感じていた。

「超ファインプレーだと思いますよ。当たり前のようで当たり前ではない。勝つために必要なことをみんなが集中して行っていた。その力が結集していた」

 チームは連敗を4で止め、優勝へのマジックナンバーを「4」とした。試合後、柳田は「もう、一戦一戦っていう気持ちは変わらないですし、また明日という気持ちです」と切り替えていた。打線に勢いをつけた2本の安打と、それ以上に光った集中力。復活した36歳がチームにもたらしたものは大きかった。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)