緒方理貢に「あんなこと言うな」 牧原大成が厳しく言及…“1軍慣れ”の真意を本音で語る

牧原大成(右)と会話する緒方理貢【写真:古川剛伊】
牧原大成(右)と会話する緒方理貢【写真:古川剛伊】

一塁にヘッドスライディング「自然とそうなった」

 後輩の発言に「あんなこと言うな」と厳しく叱った。真っすぐに伝えられるのは自分だけ。牧原大成内野手が緒方理貢外野手に送った“メッセージ”--。注目を集めた「1軍慣れ」についてだ。

 15日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)。山川穂高内野手に満塁弾が生まれ、チームは勝利した。勝ち越しの起点となったのは、この日1軍に昇格したばかりの緒方だ。7回無死に代打で登場すると、遊撃への内野安打をマーク。一塁に気迫のヘッドスライディングを見せ、セーフを勝ち取った。「自然となりましたね」。泥臭く灯した「H」のランプが、決勝点へとつながった。

 登録を抹消された5日、小久保裕紀監督は「(立場は)安泰じゃないよと。そういうのも含めてですね。僕というよりもコーチから『1軍慣れが見える』という話もあったので」と理由を説明した。あらためて危機感を与えることも、首脳陣の目的だった。2軍では4試合に出場して15打数8安打、打率.533と打ちまくり、最短の10日で1軍に帰ってきた。

 自主トレが公開された今年の1月16日、牧原大は緒方に対してこんなことを言っていた。「1軍の雰囲気を出していますよね。もっとやらないといけないんですけど、あいつにはあいつの考えがあるので。野放しにしています」。笑みを浮かべながら言及していたが、小久保監督の「1軍慣れ」にも重なる言葉。首脳陣の指摘よりも早く後輩の変化に気が付いていた。「自分の立ち位置を考えないといけないです」。7か月が経ち、背番号8が真意を語った。

小久保裕紀監督が語った「1軍慣れ」

「もちろん感じていましたよ。『2軍はぬるい』みたいなことを言っていましたけど、あれはあいつが言っちゃいけない。『あんなこと言うな』っていうのは、きょう伝えました」

 久々の再会で、自分の思いを伝えた。緒方が育成だった頃から自主トレをともにし、誰よりも近くで努力を見てきた牧原大だからこそ言える言葉だ。「僕が見る感じでは、今の立ち位置に満足しているように見えた。でも、それ(代走や守備固め)だけじゃない時が来る。自分よりもいい選手が出てきたら、試合に出られなくなるわけで。例えば、僕らがやっていることがあるのなら、それは(後輩なら)もっとやらないといけないじゃないですか」と具体的に続けた。

緒方理貢は牧原大成の言葉をどう受け止めたのか

 緒方も、厳しい言葉を真っすぐに受け止めた。「お世話になっている方に、ああやって言われるのは申し訳ないなと。自分がちゃんとやっておけば、そういうこともなかったと思うので」。取材に対して、いつも丁寧に受け答えする26歳。この日だけは「本当に1打席1打席、集中してやります。それだけです」と繰り返した。そう語る表情からは、自らの言動を省みていることが強く伝わってきた。

 7回に代打として打席に向かう直前、牧原大は緒方に声をかけていた。「ピッチャーの特徴についてですね。いい情報をもらいました」。2イニング目に入っていたロッテ・廣池の印象を伝えられたという。試合が始まれば、目指すのはチームの勝利だけ。厳しく接するだけで終わらないところも、先輩なりの愛情だったはずだ。

 ファームでは徹底的にバットを振り、体のキレを取り戻してきた。2軍での再調整は「もちろん悔しかった」と感情を隠さない。「勝負の世界なので、もう1度すぐに戻って来られるように。自分がやることだけを考えて過ごしました。目の色を変えてこれからやっていきます」。緒方にとって、胸に刻み込まれた10日間。ユニホームを脱ぐ日まで、この気持ちは絶対に忘れない。

(竹村岳 / Gaku Takemura)