正木智也が明かす手術の決め手 周東佑京からのLINE…柳町達の活躍に漏らした“本音”

笑顔で素振りをする正木智也【写真:竹村岳】
笑顔で素振りをする正木智也【写真:竹村岳】

23日からスイングを再開…久々に語った近況とは

 自らの言葉で、近況を明かした。メスを入れて約3か月。「きのう(22日)病院に行って『バッティングを始めていい』ということでした」。23日、筑後のファーム施設で術後初めてバットを手にした正木智也外野手は、前向きな表情でそう語った。

 4年目の今季は開幕スタメンを掴み、離脱するまで5番を任された。悲劇が訪れたのは4月18日の西武戦(ベルーナドーム)。スイングした際に左肩を負傷し「左肩亜脱臼」と診断された。その後に「バンカート修復術」を受け、リハビリ過程を踏んできた。全治5〜6か月。復帰を目指し、地道な日々を送っている状態だ。

 手術にいたるまで、多くの人から助言をもらった。小久保裕紀監督からの電話、周東佑京内野手の“お見舞い”……。左肩の現状を踏まえ、近況を口にした。そして、慶大の先輩である柳町達外野手の姿をどう見ているのか――。「うーん」と言葉を選びながら、思いを語った。

柳町達は「やっぱりすごいなと思いますね」

「やっぱり焦りとか、そういうのはあります。本当だったら自分が今年ああなりたかったっていう理想像を、達さんがやられているので。『なんで怪我しちゃったんだろう』って思うこともありましたけど。でも、達さんすごいなって思いますね。開幕して2軍スタートで、しかも最初はあまり調子も良くなかったじゃないですか。そこから『やっぱりあの人打つよな』って思いましたね。実力すごいなって思いました」

 柳町は交流戦で打率.397を記録し、MVPを獲得した。本来なら自分が「ああなりたかった」という姿を、慶大の先輩が見せてくれたことは率直に悔しくもあった。負傷離脱で空けてしまった自分の“椅子”を、すぐに他の選手が埋めた。「その分、焦りはありますけどね。ライバルが多いですけど、自分もその方が頑張れますし、成長できると思う」。そう自らに言い聞かせている。

「達さんだけじゃなくて、佐藤直樹さんとか、秋広(優人)、山ちゃん(山本恵大)、川村(友斗)、石塚(綜一郎)もいますし。その他にも、いろんな人たちに負けないように、今頑張るしかないなという感じです」。正木の口からは、次々と名前が出てきた。今季中の復帰は極めて難しいという状況。ライバルの存在に刺激を受けながら、自身のリハビリに集中しているところだ。

ネットスローする正木智也【写真:竹村岳】
ネットスローする正木智也【写真:竹村岳】

 左肩を負傷した4月の西武戦。「脱臼した直後はめちゃめちゃ痛かったんですけど、打席からベンチに戻るまでにもう勝手に(肩が)ハマって、あまり痛くなかったので。2、3日休めばいけるかなって感じでした」と振り返る。病院で告げられたのは、自身の感覚とはかけ離れた診断だった。「『絶対に手術した方がいい』『手術するなら5、6か月かかる』という話だったんで、その時はショックでした」。落ち込んだことを認めつつ、勇気を持って決断できたのは、さまざまな人に背中を押されたからだ。

「小久保監督からは電話をもらって、『手術した方がいいと思う』って言われました。(周東)佑京さんも脱臼の経験者なので、LINEでいろいろと教えてくれました。あとは又吉(克樹)さんに『オフに手術するっていうのも考えています』と相談したら、『オフは寒いから立ち上げに時間がかかる。温かい方が体も動くし、その方が治りも早くなるよ』と言われて。確かにそうだなと思って、決断しました」

 周東は2021年に右肩を脱臼し、手術を経験している。入院中、お見舞いにも来てくれたといい「優しいですね。なんかグミとか買ってきてくれて、元気になりました(笑)」と明かす。さまざまな要因が交差し、下した決断。「今振り返れば、手術してよかったです。やっぱり、手術しないと怖いらしいんですよ。肩が“ゆるゆる”で、いつ外れるか分からないし、2回目に外れたら絶対に手術なので。その怖さを抱えてプレーするよりは、しっかり備えた方がいいなって思いました」と舞台裏を語った。

周東佑京がお見舞いで持ってきたもの「元気出た」

 手術以降は、生活にも支障をきたした。3週間は患部をギプスで固定し、腕をつった状態。「車も運転できないし、めちゃくちゃ不便でしたね……。寝返りを打てなくて、仰向けでしか寝られなかった。左手を全く使えないので、ご飯を食べるのもちょっとめんどくさかったり……」。そう苦笑いで振り返った。できることは限られた中、重点を置いたのはウエートトレーニング。「左腕を使えるようになったのも2週間前とかで、筋トレをガンガンやっていた感じです」と近況を明かした。

 頭より上のボールに対して腕を伸ばせないため、まだキャッチボールはできない。「それができるようになったら外野ノックにも入っていける。同じペースでバッティングの強度も上げていくことになると思います」と今後を見据えた。今はしっかりと足元を見つめる。もっともっと強くなって、必ずグラウンドに帰ってくる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)