1時間5分もの中断も…抑えた“価値ある”2イニング
右腕の好投が大きな引き分けを呼び込んだ。17日に北九州市民球場で行われたロッテ戦は、3回終了時点で雷雨に見舞われ、1時間5分もの中断を余儀なくされた。コンディション調整も難しい状況下、再開後のマウンドに立ち、2回を無失点に抑える好投。チームを救ったのが大山凌投手だ。
この日の先発は松本晴投手だったが、3回までに6安打を浴び2失点と苦しい投球が続いていた。そんな中、3回裏終了後に試合は中断。試合再開となった20時10分、マウンドには大山の姿があった。
大山がブルペンに入ったのは、中断前の2回。投手にとって、一度作った肩を冷やすことなく、高めていた集中力を保ち続けることは簡単ではない。さらに、ブルペン入り後の予期せぬ中断でコンディション調整はより難しくなったはずだ。そんな中で無失点に抑えた“価値ある”2イニング。右腕は長い中断の間、何を思い、どのように気持ちを試合に向けたのか。待機していたベンチ裏での心境を素直に明かした。
素直に認めた心境…失わなかった冷静さ
「『再開したら代えるよ』と言われていたので、そこに合わせて、気持ちを切らさないようにだけ準備をしていました。だけど、正直に言えば1度切れてしまっていましたね」
集中力が途切れてしまったことを正直に認める。だが、そこからが冷静だった。「『次の回から行くよ』といつも言われる時と同じように入ろうと。もう1回準備をやり直したことがよかったんだと思います」。再開時刻が告げられると、特別なことはせず、いつも通りのルーティンをこなした。
迎えた4回。マウンドに上がると、先頭打者の三遊間の鋭い当たりを三塁の野村勇内野手が横っ飛びで好捕。このビッグプレーが右腕を力強く後押しした。「中断してからの一発目だったので、めちゃくちゃ助かりました。嬉しかったです」。野村の好守に感謝し、一気に波に乗った。特にブレーキの効いたカーブが冴え、2つの三振を奪うなど2イニングを無失点に抑え、ロッテに流れを渡さなかった。
倉野コーチも絶賛「素晴らしい」
この好投を倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)も絶賛する。「時間が空いた中での難しい登板だったが、しっかり対応してくれた。いつ再開するかわからない状況で集中の仕方が難しかったと思うんですけど、そこでしっかりスイッチを入れて、良いパフォーマンスを見せてくれたので素晴らしいです」と最大級の賛辞を贈った。
試合は結局、6回のロッテの攻撃中に再び雨が強まり、雨天コールド。規定により2-2の引き分けとなった。大山が降板後の6回に4点を失い、ロッテにリードを許していただけに、チームにとって恵みの雨となった。大山の粘りの投球が、その状況を呼び込んだといえるだろう。「球自体に色々と反省はあるんですけど、状況が悪い中でなんとか無失点に抑えられたのでよかったです」と、安堵の表情を見せた。
試合後、小久保裕紀監督は「中断から試合再開までグラウンド整備に携わってくださったすべて方々に、本当に感謝しなければいけない日となった。明後日からの前半戦ラストカードに向けてしっかり準備をし、いい形で締めたい」とコメント。落としかねない試合だったが、持ち込んだ引き分け。大山が抑えた2イニングが持つ意味は、大きかった。
(飯田航平 / Kohei Iida)