許せなかった若鷹のプレー「軽すぎる」 又吉へ異例の“謝意”…松山2軍監督が伝えた言葉

初回のピンチで自らマウンドに向かった松山秀明2軍監督【写真:竹村岳】
初回のピンチで自らマウンドに向かった松山秀明2軍監督【写真:竹村岳】

初回にイヒネ&石見がエラー…指揮官が「初めて」マウンドへ

 あまりにも、ふがいなかった。チームとして戦う意味を、もっと深く理解してほしかった。ソフトバンクの2軍は12日、ウエスタン・リーグの広島戦(タマスタ筑後)に1-9で大敗した。失策、暴投、野選まで生まれた試合。松山秀明2軍監督は堪えることができず、ベンチから腰を上げた。試合後、「軽すぎます」と語気を強めた指揮官には、見過ごせないシーンがあった。

 先発は又吉克樹投手が初回から守備の乱れに苦しんだ。イヒネ・イツア内野手と石見颯真内野手の2失策が絡んで3点を失うと、2回にも3点を献上。2番手のアレクサンダー・アルメンタ投手は5回に2暴投と制球に苦しみ、3失点した。

 指揮官が早くも動いたのは初回だった。1死満塁から又吉が押し出し四球を与えると、松山監督がタイムを要求。就任2年目で「初めてやったよ」という、自らマウンドへ向かう異例の行動だった。時間にしてわずか10秒ほど。その厳しい表情が、事の重大さを物語っていた。

結果的に3失策…その後は10安打も「正直取り返せない」

「又吉に対して、申し訳ない気持ちでいきました。あれだけ足を引っ張られるとね、投手としても抑えたいけど、どうしても難しくなる。若い選手ばかりだから、又吉はかばってくれるけど。それに甘えさせるのもよくないし、僕が出ていくしかないという感じでした」

 伝えた言葉は「しっかり守れ」という短い言葉だった。又吉はプロ12年目、ホークスに移籍して4年目の今季は契約最終年でもある。1軍昇格を目指し、限られた登板機会で準備を進めてきたベテランの足を、若手野手が引っ張ってしまった。だからこそ、指揮官は自らマウンドに向かった。

「初回で決まってしまったというか……。難しいことを求めているわけではない。普通のプレーを普通にするためには、日頃の練習が大切だということです」

 打線は10安打を放ちながらも1得点。初回に渡邉陸捕手が適時二塁打を放って以降、追加点を奪えなかった。序盤からミスによる失点を許す展開の中で、若鷹から“取り返す”という気迫を感じたのか――。松山監督の指摘は続いた。

「取り返そうとするのは当然のこと。でも正直、取り返せないんです。逆転できればいいですけど、これでもう又吉の負けは消えないじゃないですか。個人の成績でカバーできることはあっても、チームとしては取り返せないことがある。打ち取った打球をアウトにする。それは簡単そうで難しいからこそ、日頃の練習から1球に対する重みを感じないといけない。試合の1球のために練習で20球も30球もやっているわけなので。軽すぎます」

序盤から強い雨が続くも「それは言い訳になる」

 この日は試合序盤から強めの雨が降り、グラウンドは滑りやすい状態だった。育成の盛島稜大捕手がマスクを被り、一塁には牧原巧汰捕手、外野には入団4年目のマルコ・シモン外野手が2軍戦初スタメンと、経験の浅い選手が並んだのも事実だ。

 しかし、高田知季内野守備走塁コーチは「(グラウンド状況は)言い訳になる。人工芝で打球も速くなりますけど、相手も同じ条件」と一蹴する。自身の管轄で起きたミスに、首脳陣も悔しさをにじませた。「選手の人生がかかっていることだし、これで又吉は負け投手になっているわけですから。1軍から遠のく選手もいるかもしれない。当然、責任はあります」とキッパリ突きつけた。

居残りで守備練習をする石見颯真(左)と高田知季コーチ【写真:竹村岳】
居残りで守備練習をする石見颯真(左)と高田知季コーチ【写真:竹村岳】

 試合後、石見が居残りで守備練習に励み、高田コーチが付きっきりで指導する姿があった。「この失敗をどう生かすのか。もちろん僕も含めてですけど、取り組みや姿勢は変えていかないといけないです。やってきたことが出せないのは悔しいですから」と高田コーチは唇を噛んだ。

 ひとつのプレーが、仲間のキャリアを左右する。グラウンドに立つ以上、プロとしてその責任を背負わなければならない。若鷹たちにとって、あまりにも重い敗戦となった。

(竹村岳 / Gaku Takemura)