見逃せぬミス「正直厳しい」 試合中に突然の守備変更…見えた“栗原復帰後”の展望

ジーター・ダウンズ(中央)と話し込む本多雄一内野守備走塁兼作戦コーチ(右)【写真:栗木一考】
ジーター・ダウンズ(中央)と話し込む本多雄一内野守備走塁兼作戦コーチ(右)【写真:栗木一考】

9日のオリックス戦、何気ないポジション交代の意図

 チームにとっての“朗報”は、同時にポジションの再編も意味する。12日のウエスタン・リーグ、オリックス戦(京セラドーム)。開幕直前に右脇腹を痛めていた栗原陵矢内野手が「3番・三塁」で実戦に復帰した。いきなり安打を放つと、翌13日には復帰後初アーチもマーク。1軍合流への確かな一歩を踏み出した。

 その3日前の9日、1軍のオリックス戦では気になる采配が見られた。この日のスタメンは二塁にジーター・ダウンズ内野手、三塁に廣瀬隆太内野手が入っていたが、7回裏が始まる前に2人のポジションを入れ替えた。

 何気ないシーンには首脳陣の確かな意図が表れていた。小久保裕紀監督に守備位置の交代を提案した本多雄一内野守備走塁兼作戦コーチ、そして奈良原浩ヘッドコーチに聞いた、「栗原復帰後」のビジョンとは――。

本多コーチの提案「勝つためには手段を選ばない」

「やっぱり1軍に戻ってきたら、どうしても三塁は栗原ということになると思います。限られた人数の中で、クリが帰ってくれば落ちる人も出てくる。チームが勝つためにはどの形がベストなのか。1軍にいる以上は、やっぱりミスは許されないということです」

 本多コーチが「ミス」と指摘したのは9日の試合の5回、1死一、三塁で西川のゴロをファンブルした二塁手ダウンズのプレーだった。おあつらえ向きのゲッツーコースに飛んだ平凡な打球を痛恨の失策。「1軍であのミスをされると、正直厳しい。厳しいですね」。本多コーチはきっぱりと言い切り、さらに続けた。

「ジーターの一生懸命野球に取り組む姿勢だったり、失敗を成功に変えていくという思いと行動は伝わってくる。ただ、やっぱり勝つことが一番なので。そのためには手段を選ばない。よりいい選手を使うし、守備でミスすれば次の日は使われないっていう可能性も当然出てきますから。勝つためには、ジーターがサードをしたらどうなのかなということも考えています」

 栗原不在で迎えた今シーズンの開幕。スタートは三塁にリチャード内野手を起用し、二塁はダウンズと牧原大成内野手の併用だった。リチャードが2軍に降格し、廣瀬が昇格してからは、ダウンズ、牧原大、廣瀬が二塁と三塁を分け合うような形となっていた。栗原の復帰後は「三塁・栗原」が基本線となる。首脳陣としても新たな布陣を模索することとなる。

奈良原浩ヘッドコーチ(左)と談笑する廣瀬隆太【写真:栗木一考】
奈良原浩ヘッドコーチ(左)と談笑する廣瀬隆太【写真:栗木一考】

近藤、柳田の離脱…首脳陣が模索する新たな形

「ダウンズはセカンドとしての動きに不安要素があることは間違いない。あのエラーに限らず、フォーメーションの動きもきっちりできていなかったので。このまま(二塁で起用する)よりは、あまり絡まないところ(三塁)の方がいいという判断もありますね」

 そう口にしたのは奈良原ヘッドコーチだ。9日の試合でのポジションチェンジについても「あのままいって、命取りになってしまうと困るので。そうならないようにという処置です」と説明した。

 一方で、ダウンズのセカンド起用を“諦める”わけではない。「できないままじゃ困るので。『セカンドの動きはこうだよ』って教えていくのがコーチの仕事。そのあたりは根気よくやりながら。しっかりとした動きができるようにしていきましょうっていう話は、コーチ陣には共有しています」と明かす。

 近藤健介外野手、柳田悠岐外野手が離脱したチームにおいて、栗原の復帰は間違いなく大きな光となる。その一方で、二塁をめぐるサバイバルが激しさを増すことも事実だ。厚い選手層を誇るホークスだけに、首脳陣の決断も難しくなりそうだ。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)