何度も語った…「マジで1軍に残りたい」
必死のアピールを続けてきた岩井俊介投手は2軍で汗を流す。開幕1軍入りを目指す中で、オープン戦期間中には何度も「マジで1軍に残りたいです」と繰り返していた。その願いは叶わず今季も2軍からのスタートとなった。「残れなかったですね」。短い言葉に無念さがにじむ。
オープン戦では6試合に登板。7回2/3を投げて、防御率3.52の成績だった。昨年から中継ぎの主力メンバーがほぼ固まっていた中で、限られた枠を狙い、成長した姿を見せたがあと一歩及ばなかった。
指揮官からの通告は、3月23日のマツダスタジアムでの試合後だった。「マネジャーから『監督室行って』って言われて、『あぁ、きたな……』って感じでした」。小久保裕紀監督から告げられた言葉に、右腕は“優しさ”を感じるとともに、今後の大きな目標を立てるきっかけを得たという。
「監督からは『(他の投手と)遜色ないから、いつでも上がってこられる準備をしとけ』みたいに言われました」
2軍行きを告げられた際の状況をそう振り返る。オープン戦の結果だけを見れば、決して出来が悪かったわけではない。着実にレベルアップした姿を示すことはできていた。実際、ベテランの又吉克樹投手も、5試合に登板して防御率1.69と好投しながらも開幕1軍入りを逃すなど、投手陣の厚すぎる壁があった。
「あれは言ってくれただけです……。本当はすごくレベルが違うんですよ。すごい差があるんすけど、言ってくれただけで、監督の優しさです」
指揮官からの“遜色はない”との言葉を謙虚に受け取るが、そこで得たものはあった。「燃え尽き症候群が出ました。正直言ってオープン戦で燃え尽きました」と、一時的な虚脱感に見舞われたことを素直に打ち明ける。エネルギッシュな普段の姿からは想像できないほど。それだけ1軍に残る思いが強かったという何よりの証拠だった。
右腕の本気…明確な目標「球がふけてもいい」
しかし、プロの世界で感傷に浸っている時間はない。「今はもう切り替えられました」。その目はすでに前を向いている。監督の「優しさ」に甘えるつもりはなく「圧倒的な数字を出してアピールします」と力強く宣言する。
「去年よりはだいぶ良い状態なんで。早いうちから勝負できると思います。160キロをマジで投げます。圧倒的な球速を出して、そこで勝負します。160キロならいくら球がふけてもいいと思うんで。自己最速(156キロ)を更新しつつ、課題を克服できればチャンスはあると思います」
ルーキーイヤーの昨季は15試合に登板して1勝1敗1セーブ、防御率3.46の成績を残し、リーグ優勝にも貢献した。「2軍にいると、自分のやりたいことができるんですよね。インコースのスライダーとか、カットボールとかも投げたいです」とファームでの時間は、今の岩井にとっては大切な時間になる。中継ぎ陣の不調も気になる中、チームに欠かせない存在になって1軍の舞台に帰るつもりだ。
(飯田航平 / Kohei Iida)