前田悠伍を「壊して変えろ」 戦力外で変化…藤井皓哉の“問い”「なぜ2軍に落ちた?」

藤井皓哉(左)と前田悠伍【写真:竹村岳】
藤井皓哉(左)と前田悠伍【写真:竹村岳】

3月21日の2軍戦で2人は登板…試合後のロッカーで会話

 2年目、19歳にしてぶち当たろうとしている壁。迷いを察した先輩から、かけた言葉だった。ソフトバンクの前田悠伍投手は3月、藤井皓哉投手と20分ほど話し込む機会があった。厳しくも聞こえる「去年と一緒」という助言には、どんな真意が込められているのか。

 前田悠はルーキーイヤーの2024年、ウエスタン・リーグで12試合に登板。4勝1敗1セーブ、防御率1.94と、高卒1年目ながらも堂々の成績を残した。一方で、1軍では1試合に先発して3回6失点。まだまだ課題があることを突きつけられていた。2年目は春季キャンプから開幕ローテーションを争う1人として期待されたが、さらなる出力アップを期待されて2軍降格となった。

 現在、2軍で3試合に登板して1勝2敗、防御率1.50。「最初の2試合は去年と同じような感じでいってしまっていた」と反省が尽きないのも、藤井からもらった言葉があるからだ。28歳の先輩右腕は「言われている課題に対して、抑えているけど……と、そういう話をしました」と明かす。3月21日の出来事だ。

「(前田悠が)球速が出ない、みたいな話になったので『じゃあ、なんで下に落ちてきたの?』『一回ぶち壊せばいいんじゃない?』みたいな。あとは『ずっと中6日で、この抑え方で抑えていても、(1軍には)上がらないんじゃない?』って話もしました」

 くふうハヤテ戦(タマスタ筑後)で前田悠が6回1失点に抑えた後、3番手としてマウンドに上がったのが藤井だ。目の前で後輩の投球を見ていたから、より印象は脳裏に残った。2人がロッカーで話し込んだのは、試合後。変化球を操り、19歳とは思えないほどのマウンドさばきが最大の武器でもある。「僕が言っていることが正しいわけではないですけど……」。1人の投手として「面白くない」と直接伝えたのも、後輩の未来を思ったからこそだ。将来性あふれる左腕に、小さくまとまってほしくなかった。

前田悠伍というものを、前田悠伍の概念を壊して変えてみろ、というニュアンスで話をしました。彼の場合、普通にやったら抑えるじゃないですか。目指しているのは、その上だと思うので。『そのピッチングだと2巡目に捕まらない?』って。持っているものはすごくいいんですけど、ベテランみたいなピッチングをしていたので、僕はもっと真っすぐで押せると思いました」

2020年オフに広島を戦力外に…高知で「大きな変化」

 壁に直面し、乗り越えようと努力する。プロ野球選手なら誰もが経験することだ。「ぶち当たっていなきゃ、クビになんてなっていないですよ。これまでと一緒だと意味がないと思ったし。そこで変わりたいっていう思いがあった。変わらないと、見てもらえなかったですから」。2020年オフに広島から戦力外通告を受け、翌2021年は四国IL高知でプレーした。独立リーグという厳しい環境からもう1度NPB入りを果たすために、藤井自身も劇的な変化を求めた。

 広島での終盤、そしてホークス入団時の投球スタイルを比較すると「全然違うと思います。僕は高知に行ったことが大きな変化だった。そこで、その気持ちに変われたことが一番大きかったです」という。投球の基本となるのは直球。藤井に置き換えても「僕の場合は大事です。真っすぐがないと変化球も振ってくれないし、すごい球種が3つも4つもあるかっていうとそうじゃないので」。落差のあるフォークが最大の武器。2023年には先発も経験するなど、相手を圧倒するため、“進化”しようと努力してきた。

「常に変化、上に上にってやっていかないと。同じような力量だと若い選手が使われますし。そこに負けないようにというか、という感じですかね。自分自身としても、もっとレベルアップしたいですし、するために上手くならないといけないですよね」

 前田悠は、11日のオリックス2軍戦(京セラ)で登板する見込み。「僕がいうのもあれなので、彼次第だと思います」。どんな投球を見せてくれるのか。1軍という舞台から、藤井も心待ちにしていた。

(竹村岳 / Gaku Takemura)