今永昇太とともにした自主トレ…千賀と共通する“姿”
鷹フルでは、主力選手はもちろん、若鷹にもスポットを当てながら「連載」をお届けします。前田悠伍投手の第2回、テーマはカブスの今永昇太投手についてです。MLBの開幕戦を見つめながら、画面越しに伝わってきた思い。試合直後の連絡に、返ってきた“らしい言葉”を明かしました。徹底的な体調管理を貫く先輩から学んだのは、プロ野球選手として大切なものでした。
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3月18日、東京ドームで行われたドジャースvsカブス戦。「自分はメンタルの強い選手ではない。逃げ出したいこともある」とも話していたが、今永は4回無失点と見事に結果を残した。開幕投手が発表されたのが、日本時間で2月19日。先発投手はスケジュールを逆算して調整を行うだけに「風邪すらひけない」と、背負う重圧を口にしていた。
「若鷹寮」の自室。前田悠は1人で、テレビ観戦していた。自主トレをともにした先輩左腕が“世界一”のド軍を相手にゼロを並べたのだから、自然と胸は熱くなった。
「間近で見ていた人なので、メジャーでもあれだけ打てないというか。えぐい真っすぐ投げていたので。あれを自分も投げられるようになったらもっと楽になる。もう1つ上が見えてくると思いますし、ああいう結果を残せるのは何か1つ、飛び抜けているのかなと思いました。僕も今永さんみたいな真っすぐを、そしてあの人を超えられるような投手になりたいです」
前田悠の目から見ても、今永はオンオフの切り替えがはっきりしているという。「いつもふざけているんですけど、野球になったらすごいです」。明るいキャラクターが代名詞でもあるが、真剣勝負になれば目の色が変わっていた。試合が終わった後、「えぐかったっすね」と自ら連絡をしてみた。「そんなことない」と謙遜の言葉。「いい顔していました」という後輩らしいメッセージには、「やっぱ顔からやろ」と、茶目っ気たっぷりに返事が来た。
今年1月、およそ2週間の合同自主トレを行なった。開幕投手を託されたのは2月19日ではあるが、「風邪すらひけない」という徹底的な体調管理。その姿は19歳の目にも「朝のストレッチから同じことを毎日継続している。『今日はいいや』とかじゃなくて、練習中もやるべきことをやって、同じクオリティで野球をやっていたので、そういう人が活躍するんだな。それは今永さんも千賀さんも共通して思いました」。2人のメジャーリーガーに同じ印象を抱いたのだから、オフシーズンから貴重な経験を積み重ねてきた。
技術的な課題は直球「やっと僕の中で1つに」
競争が本格化した2月の春季キャンプ、第1クールには体調不良で一時離脱も味わった。38度の発熱もあったといい「もったいないですよね。治ったとしても、走ったらしんどいですし。他の人との差もできるじゃないですか」。どんな瞬間も、プロ野球選手として過ごす。今永の影響で、生活に定着したのは早起きだ。「朝の2、3時間が脳のゴールデンタイムって話を見たりして、読書やウエート、ストレッチをしてから練習に行くようになりましたね」。今の技術的な課題は、とにかく直球だ。
「真っすぐというところで、自分のフォームを見つめ直して、どこでエネルギーをロスしているか。突っ込んでいるから腕が遅れて、手首が寝るみたいな。そういうつながりも、やっと僕の中で1つになったというか、やるべきことが明確になった。ちょっと試合(3月28日のオリックスとの2軍戦)でそれが球に、スピードに表れたので。これを満足せずに続けていけたら」
ここまでウエスタン・リーグで3試合に登板して1勝2敗、防御率1.50。3月14日には、同リーグの開幕戦マウンドも経験した。「大事な試合というか、2軍でも開幕は落とせない大事な試合。結果は負けてしまいましたけど、やるべきことはできた。変な投球はしなかったので、そこは成長できたのかなと。いい課題も見つかったので」。舞台は違えど、1つの節目に合わせて調整するのは、今永とも重ねる経験。丁寧に、一歩ずつステップを踏んでいる。
「筋肉痛で投げるくらいの気持ちというか。トレーニングや、ピッチングのドリルを継続して、何年も先を見ながらやっていきたいです」。目先の結果はもちろん、目指すのはスケールの大きなサウスポー。今永を「超えられるように」というのは、前田悠だから抱ける本気の目標だ。
(竹村岳 / Gaku Takemura)