谷川原から渡邉に交代…「絞らないといけない」
競争は続いている。首脳陣は改めて言葉にした。ソフトバンクは4日、西武戦(みずほPayPayドーム)に0-6で敗戦した。先発した有原航平投手が3回1/3を投げて6失点で2敗目を喫した。ワンサイドの展開となった中、注目すべきタクトが振るわれたのは6回だった。谷川原健太捕手から、渡邉陸捕手に交代。この采配に込められた意図を、小久保裕紀監督と高谷裕亮バッテリーコーチの言葉から紐解いていく。
有原は3回まで無失点投球を続けていたが、4回に暗転した。四死球と安打で無死満塁とされ、野村には2点二塁打を許す。不運な打球も重なり、5安打を集められた。「短いイニングでマウンドを降りることになり、チームに迷惑をかけてしまった。このような試合展開にしてしまい、本当に申し訳ないです」。前回登板は3月28日のロッテ戦。5回まで走者を許さない内容だったが、6回に6点を失った。
この日、途中からマスクを被った渡邉は、松本晴投手、津森宥紀投手とバッテリーを組んでゼロを並べた。試合後、捕手の交代について指揮官が語ったのは「ゆくゆくは3人から2人に絞らないといけないので」。現在、1軍に帯同している野手は17人。16人にする必要性と同時に、捕手を2人にすることも強調していた。
高谷コーチも「僕はそういうふうに見ています。今の人が決まりではない」と、小久保監督の言葉に同調する。そして「2軍の選手にもチャンスはあるかもしれないですし。本気で(レギュラーを)獲りにいくのであれば、そういう姿は出てくると思う」と語った。
リーグ優勝を掴んだ昨シーズン、1年のほとんどを「捕手2人」で戦った。その体制に、いずれはすることを首脳陣は示唆してきた。今年3月には1度、2軍降格も味わった渡邉が開幕1軍を掴んだ。2軍スタートとなった嶺井博希捕手をはじめ、チャンスは全員に存在するという状況は、今も同じだと高谷コーチは訴える。最善の形を探す道のりは、もう少し続きそうだ。
相手チームはもちろん…知るべきは「自分たちの投手」
捕手に対して、高谷コーチが求めているのは「堂々とすること」。サイン1つで展開が動く野球の試合。捕手の指1本には、自信も不安も詰まっており、その思いは投手にも野手にもすぐに伝わってしまう。だからこそ、徹底的な準備の重要性を首脳陣は説いてきた。一方で「矛盾してしまうんですけど……」と、足元も見つめる。
「詰め込み過ぎてもよくないんですよ。相手のことを知るのも大事ですけど、まずは自分たちの投手を知る必要がありますよね。自分の中のイメージと、投手と照らし合わせて、別のことをやってしまってはいけないので」
膨大なデータを頭に入れて、試合へと立ち向かう。相手チームの情報はもちろん大切だが、自軍の投手と呼吸を合わせることが最優先だという。「そのために、あれだけブルペンでボールを受けてきているわけですから」。キャンプ中から積み重ねている全ては、シーズンでの1勝のため。グラウンドで起こる経験を糧にして、全員で“強い捕手陣”を目指している。
「思い切ってやってもらうしかない。勝っても負けても、きょうの試合は返ってこないので。準備して、試合して、反省して、毎日それの繰り返しです。『俺が代表で出ているんだ』と」。1つしかない捕手というポジションを、今は奪い合っている。だからこそ、誰がマスクを被っても“チームの代表”だ。いずれは「2枠」になるかもしれないが、目の前のプレーに全力を尽くしていく。
(竹村岳 / Gaku Takemura)