プロ初本塁打に安堵…「やっと出た」
オールドルーキーが躍動する。育成ドラフト3位で入団した大友宗捕手がファームで存在感を高めている。「今年が勝負だと思っているので」。今季で26歳を迎えるルーキーは並々ならぬ覚悟でプロの世界に飛び込んだ。1年目での支配下登録へアピールを続ける中で確実な成長曲線を描いている。
衝撃的だったのは、1日にナゴヤ球場で行われたウエスタン・リーグの中日戦でのプレーだ。「9番・捕手」で先発出場。この日は1安打を記録したが、観客の目を釘付けにしたのはその強肩だった。3回2死、先発の村田賢一投手が安打を許すと、一塁走者がモーションを盗んで完璧なスタートを切った。誰もが楽々セーフと思った瞬間、大友は矢のような送球を見せる。判定こそセーフだったものの、1軍ならリプレー検証が行われてもおかしくないほどの際どいタイミングに、敵地のスタンドもどよめいた。
翌2日もスタメン出場。1点ビハインドの2回には、追い込まれながらも左前に同点打、4回にはレフトスタンドへプロ初本塁打となる豪快な3ランを放ち、この日の全打点を叩き出した。「やっと出たな、という気持ちです」と爽やかな笑顔を浮かべた。プレーでも結果でも著しい成長を見せる大友だが、すべてが順調なわけではない。「野球人生に悔いを残さないように」――。自身の持ち味を発揮できずにいた時期があった。
「始まった時はなかなか上手くいかないことが多くて、自分の中では『結果が欲しい』にとらわれすぎていて、思い切ったプレーができなかったことがありました」
プロの壁、そして結果を求める“焦り”があったことを正直に認める。だが、最近はその思考にも変化が生まれた。「打席の中でも成長を求めていけるようになったことが、いい結果に繋がってるのかなと思います」。結果を出すことも必要ではあるが、1打席、1球に向き合う中でも、自身の成長に目を向けることでプレーに伸びやかさが出るようになってきた。
「まずは全力でやること。支配下になれるようにやらないといけないですし、自分は今年が勝負だと思っています。自分の野球人生に悔いを残さないように、思い切りやりたい」。ルーキーイヤーとはいえ、25歳という年齢が、無意識のうちに自身を追い込んでいたのかもしれない。
細川コーチも認めた大友の“急成長”ぶり
一方で、その成長ぶりは春季キャンプから大友を見てきた細川亨2軍バッテリーコーチも認めるところだ。「送球のブレが大きかったんですけど、投げるコースやコントロールもよくなっていますし。ブロッキングも、最近は試合に出ていてもほとんど後ろに逸らさないですし。ピッチャーへの声かけの部分も成長してきている」と目を細める。
「チームメートともコミュニケーションとか、試合の流れとかも経験を積む中で身についてきていると感じる」と細川コーチ。大友自身も、「キャッチャーのミーティングの中で、細川コーチが嶺井(博希捕手)さんに対して『こういうところが良いよね』っていう話をされることもあります。それを自分の中に吸収して、噛み砕きながら実践しています」。他の選手へのアドバイスさえも、自らの糧とする姿勢が成長を加速させている。
実戦を積むにつれて楽しさも感じるようになってきた。「すごく配球の勉強をしています。1試合を通してみても、1打席ごとの繋がりがありますし、試合ごとの繋がりもありますし、そのための布石もあります。簡単に楽しいと言うものではないですけど、すごく奥が深くて面白い」。その難しさに試行錯誤しながらも、探求心を持って取り組んでいる。
武器は強肩だけではない。俊足も持ち味で、2日の試合では盗塁も決めた。「身体能力をグラウンドで表現したい」と言葉には確かな自信がにじむ。課題はまだ多いが、大友のプレーは2軍の試合でも際立つものがある。多くの壁に挑む中で見せる成長過程は一つの楽しみとなる。オールドルーキーの挑戦は、まだ始まったばかりだ。
(飯田航平 / Kohei Iida)