コンプレックスのはずが…今やダントツ数値「14.5」 前田純にある原風景「小学生のころから…」

2日の日本ハム戦で今季初登板に臨む前田純【写真:冨田成美】
2日の日本ハム戦で今季初登板に臨む前田純【写真:冨田成美】

プロ初勝利の地で臨む今季初登板「気負わずに」

 高校時代、3年間で1度もベンチ入りすることができなかった男が開幕5戦目のマウンドに上がる。身長189センチの長身左腕に急成長をもたらしたのは、投手として抱き続けてきた“コンプレックス”だった。「遅い遅いって……」。2日の日本ハム戦で先発する前田純投手が明かした「野望」とは――。

 沖縄・中部商高から大分・日本文理大を経て、2022年育成ドラフト10位で入団した左腕。プロ2年目の昨夏に支配下選手登録を勝ち取ると、9月29日の日本ハム戦(エスコンフィールド)でプロ初登板初先発し、6回無失点の快投で初勝利を手にした。縁起のいい舞台で迎える今季初登板。「気負わず、変わらずに投げるだけです」と平常心でマウンドに上がるつもりだ。

 開幕ローテ候補の一角として臨んだ今春キャンプからアピールを続け、オープン戦でも3度の登板で15イニングを2失点(自責1)、防御率0.60と文句のつけようがない成績を残した。周囲の予想を大きく超える成長曲線を描いた左腕が率直な心境と、胸に秘める将来のビジョンを明かした。

「ここからが本当の勝負ではあるんですけど……。正直に言えば、『本当にうまくいきすぎたな』って感じです。シーズンが終わるまで自分が作った波に乗っていければいいなと思っています」

昨季2軍で叩き出した驚異の数値

 高校時代はベンチ入りすら叶わなかった。熾烈な競争を制して開幕ローテ入りをつかんだのは、まさに「シンデレラストーリー」だ。何が前田純を“覚醒”に導いたのか――。それは投手ならだれでもが持ちうるコンプレックスだった。

「小学生のころから『遅い遅い』とずっと言われてきたので。最初は別にいいやと思っていたんですけど、さすがに言われ続けたので……。やっぱり気にするようにはなりますよね」

 高校時代の最速は126キロ。現在も145キロと、現代のプロ野球界では決して速い部類ではない。それでも、長身から繰り出す直球は紛れもなく最大の武器となっている。セイバーメトリクスの指標などを用いて分析を行う株式会社DELTAのデータによると、昨季の2軍においてストレートによる失点増減の合計を示す「wFA」は断トツの「14.5」をマーク。あくまでファームにおける数値ではあるが、150キロに満たないストレートで相手を圧倒してきた。

「いずれは150キロの真っすぐも投げたい」と意気込む24歳が目指すのは、自身と同じ左腕のリバン・モイネロ投手だ。「モイネロは真っすぐもカーブもチェンジアップも持ち球全てが勝負球になる。そういうピッチャーになれば、おのずとどのボールを投げたってバッターが迷ってくれる。そこは理想ですよね」

 育成選手の中でも下位での指名から這い上がってきた。これまで見せてきた進化のスピードを考えれば、胸に抱く野望の実現も不可能ではないように思えてくる。入団会見で掲げた“不撓不屈”の精神を胸に、歩みを止めるつもりはない。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)